《本記事のポイント》

  • 米屈指の国立研究所が、コロナは中国の研究所から漏洩した説は「妥当」と判断
  • 今や自然発生説の信ぴょう性は大きく後退し、同説の理論的主柱は雲隠れ
  • 「親中医学誌」が中国のプロパガンダに加担し、「トランプ嫌い」が真実を闇に葬った

新型コロナウィルスの起源をめぐり、バイオセキュリティなどを専門とする米ローレンス・リバモア国立研究所が昨年5月にまとめた報告書で、「コロナは中国・武漢の研究所から外部に流出した」という仮説は妥当であり、さらなる調査が行われるべきだと結論付けていたことが分かった。8日付米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、同報告書に詳しい複数の関係者への取材によって明らかになったと報じた。

報告書は、生物学の知見が豊富にあるローレンス・リバモア研究所の情報部門である「Z部門」が、コロナの遺伝子組み換えなどを研究し、まとめたもの。

国務省の調査に関与した元当局者によれば、2020年春には、「コロナに感染した動物から人間に感染が広がり、パンデミックが起きた」という見方が確実視され、中国の研究所から流出したなどの説は否定的に捉えられた。しかし米屈指の国立研究所が、自然発生説とは異なる見解を示したため、風向きが変わり、米政府は真剣に研究所説を検討するに至ったという。

バイデン米大統領は5月に、90日以内にコロナの起源に関する報告書を提供するよう、諜報機関に要請。今後、米政府の判断を変えた今回の報告書が、改めて注目されることになるだろう。

自然発生説の理論的主柱が雲隠れ

もともと研究所説が陰謀論扱いされたのは、20年2月に医学雑誌「ランセット」に掲載された書簡がきっかけである。

書簡の連名の一人で、自然発生説の理論的主柱であるクリスティアン・アンダーソン博士は当初、「コロナは人為的に操作された可能性がある」との考えを持っていた。しかし、米政府の感染症対策専門家アンソニー・ファウチ氏らと連絡を取った後、その考えを一変させ、自然発生説派に転向したことが、ファウチ氏とのメールによって判明。ネット上で、見解の矛盾を指摘する声が相次ぐと、アンダーソン氏は自身のツイッターを削除し、雲隠れを図った。

これにより、ファウチ氏が同博士に圧力を加え、自然発生説を主張する論文をまとめさせた可能性が急浮上した。この問題は米議会で大いに追及されるべきである。

「親中医学誌」が中国のプロパガンダを支援

さらに論文を掲載したランセットは、台湾人学者の論文掲載を拒否するなど、その編集方針から「中国寄り」であると問題視されてきた媒体でもある。

同誌編集長のリチャード・ホートン氏は2015年に、中国の技術進歩に貢献したとの理由で中国政府から賞を贈られ、自身は「医療はマルクスからたくさん学べる」というコラムを書くほど、共産主義に親和性のある人物。同氏は昨年、アメリカのコロナ対策を激しく批判する一方、中国を称賛するという、中国のプロパガンダの片棒を担いだ。

このような例は一部にすぎず、中国に抱き込まれた有名学者が自然発生説を広めた。

「トランプ嫌い」が研究所説を闇に葬った

このように一連の流れを見ると、自然発生説は科学的というより、非常に政治的な背景から提唱されてきたことが分かる。その上で、客観性を旨とすべき言論界で忌み嫌われているはずの感情論が、研究所説を否定する流れをより確実なものにした。

いみじくも、米ABCのキャスターであるジョナサン・カール氏が「我々の多くが面目を失った。ポンペオ元国務長官やトランプ氏が言ったことにも、真実はあり得るにもかかわらず、我々は研究所流出説を無視し続けた」といった趣旨を述べたように、「トランプ嫌い」によって、研究所説は魔女狩りに遭い、闇に葬られた。

そして今、その闇から真実が掘り返され、研究所説が再燃しているというわけだ。

ちなみに中国は、コロナの起源をめぐり、迅速かつ大規模なプロパガンダを仕掛けることで、「既成事実化」を図り、同国にとって優位な言論空間をつくり出した。これはまるで、尖閣諸島を素早く奪取し、日米の介入を防ぐという戦略と酷似しているのは興味深い。ウィルス戦争とプロパガンダという観点からも、より分析が進められるべきである。

いずれにせよ、研究所説はもはや無視できないものとなった。各国の政府や有識者、メディアはこの説を真剣に議論し、検証すべきである。

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