《本記事のポイント》
- ケインズの乗数効果は働かない
- アメリカでは「ワープ・スピード作戦」で、記録的な速さでワクチンを開発
- 貧者の核兵器に対する危機管理意識の欠如
政府による追加経済対策が8日、閣議決定された。新型コロナウィルス感染拡大に対応するという名目のもと、73.6兆円もの事業規模となった。
コロナ対策には6兆円程度を盛り込み、経済構造の転換・好循環実現と称して、約51兆円の事業規模を見込んだ。
政府は"酔っぱらいの船乗り"のようにお金を使う
クリーン・エネルギーやデジタルに重点に置くのは主要国の潮流だが、それが経済の「好循環」を生むとは思えない。
クリーン・エネルギー政策は、国民に高いエネルギーコストを背負わせかねないものである。またデジタル化は、GDPの7割を占めるサービス産業が接触型であることを踏まえると、経済を冷え込ませる政策である。それは巨大な監視社会の構築につながるという別途深刻な問題をはらんでいる上、スマートシティ構想のための技術を中国に依存するという点でも、非常に危険である。
尋常でない予算規模
第三次補正予算を含めた今年の歳出の規模は、当初予算の1.8倍の180兆円に迫った。当初予算でも、歳入の約3割の約30兆円が国債発行などによる借金に依存していた。すでに毎年歳入の約4分の1を、元本を含めた借金の利子の返済の返済に充てているが、この借金がさらに増える計算だ。借金の返済で、国民経済の首が締まってくるのは間違いない。
もちろんこの傾向は日本だけではない。コロナ対策にかかわる世界の財政支出や金融支援は、世界全体で12兆ドル(約1250兆円)に上る。ほかの国と同じだと安心するのが日本的発想の根本にあるのかもしれないが、それによって放漫財政を正当化することはできないはずだ。
アメリカのトランプ政権の経済顧問を務めるアーサー・ラッファー博士は、レーガン大統領の言葉として、「政府は酔っぱらった船乗りみたいにお金を使う。でも船乗りは翌日には素面(しらふ)になるが、政府は素面にならない。船乗りは自分のポケットマネーでお酒を飲むのであって、ほかの人のお金で飲むわけではない」と弊誌の取材で応えている(『ザ・リバティ』7月号40ページ)。
まるで「酔っ払いの船乗り」のごとく、しかも「他人のお金」を使うのが政府だ。その借金の返済義務を負うのは国民だということを政府はまるで理解していないようだ。
"コロナ対策"と称してこれまで1項目あたり、大きくても数千億円程度だったのが、「兆円」単位の予算がまかり通るようになってしまった。
そんな"景気刺激策"などなくとも、ロックダウンをする州が減ったことで、アメリカの第三四半期のGDP成長率は33%も上昇したことを考えれば、政府の"刺激策"の有効性を疑ってしかるべきだろう。
ケインズの乗数効果は働かない
そもそもケインズの乗数効果は働かないという意見もある。ジョージ・メイソン大学のスコット・サマー教授は、オバマ時代の景気刺激策の乗数効果はゼロであったと述べている。
また民間から取って政府が使えば1.35倍効率が悪いと、弊誌の取材したラッファー博士は幾度となく述べている。
ケインズでさえ自分自身の経済学は短期的なもので、長期的にケインズ政策を続ければ、大きな政府となり、社会主義になることを認めていた。その言葉通り、ケインズ政策を続けてきた日本は社会主義国家になりつつある。
「ワープ・スピード作戦」で、記録的な速さでワクチンを開発
だからといって、政府の役割を否定しているわけではない。国民の生命や安全が危機にさらされている時こそ、政府の出番だからだ。コロナによる感染者は全世界で累計7千万人を超えた(12月12日時点)。半月で1千万人を超えた計算になる。死者数は約160万人で、日本でも日々、感染者数が大きく更新されている。
この中国からばら撒かれた厄災に対して、早急に手を打ったのはアメリカ政府である。「ワープ・スピード作戦」という官民連携(PPP)のプロジェクトで、ワクチンの開発・生産を急いだ。
財源は「コロナウィルス支援・救済・経済安全保障法(Cares Act)」の補正予算で確保された約140億ドル(約1兆4500億円)が充てられた。
この作戦は、米保険福祉省(HHS)、米疾病予防センター(CDC)、米食品医薬局(FDA)、米国立衛生研究所(NIH)、米生物医学先端研究開発局(BARDA)のみならず、米国防総省とその傘下にある米国防高等研究計画局(DARPA)、米農務省、米エネルギー省と民間企業とのパートナーシップで行われた。
スタートしたのは3月末。そこから始めて12月にはワクチンができているので、通常10年はかかるとされていたワクチンの開発に9カ月で成功したことになる。"締め切り感覚"のない官僚に任せず「PPP」という官民連携の仕組みを使ったことが幸いした。
エイズに対するワクチンでさえ開発されていない中で、コロナ・ワクチンの開発に成功。「光速を超えたスピード(オペレーション・ワープ)」という名前に恥じない作戦になったのではないか。それは政府機関のみならず、民間の力を総動員して原爆を開発した「マンハッタン計画」に比肩されるもので、経営的センスのあるトランプ氏ならではの成果である。
もちろん、このワクチンがどこまで効くかは未知数だ。
宇宙存在のR・A・ゴールは『地球を見守る宇宙存在の眼』において、こう述べていた。
「どこまで効くかは分かりませんけど、ワクチンの研究はやっているので。アメリカの製薬会社の研究開発がいちばん信頼はできるでしょうから、いいものができてくるのではないかと思います。ただ、(コロナウィルスの)種類が幾つかに分かれてきているので、それに合ったものがつくれるかどうかというところはあります」
貧者の核兵器に対する危機管理意識の欠如
効果のほどはR・A・ゴールが述べるように定かではない。だが少なくともアメリカでは、国家の非常事態に、政府が危機管理の意識を持ち、国民の生命を守るために、民間を活用しながら、重点的かつ効果的に予算を投じることができたという点は評価すべきである。このようなスピード感覚で成果を上げる姿勢を日本政府も見習うべきではないか。
アメリカの危機管理に対する備えは2001年の世界同時多発テロまで遡る。ワールドトレードセンターへの攻撃を受け、当時のブッシュ大統領が、生物兵器による攻撃に対しても、危機意識を高めた。ワクチン開発に非常に時間がかかることを問題視したブッシュ氏は、ワクチンの開発に大幅な見直しをかけたという。
生物兵器は、通常兵器と比べて非常に安価で、殺傷力が高い。人一人を殺傷する費用を比較すると、核兵器20万円、化学兵器2万円、そして生物兵器は100円となる。そのため「貧者の核兵器」と呼ばれてきたが、日本では、この生物兵器が実際に使われることを想定した危機管理面での備えはなかったに等しい。
しかもアメリカではトランプ氏が在任中に、国として信仰心を大切にする方針が出され、保守系のバレット判事が加わったことで、宗教が尊重される国家へと変貌を遂げている。信仰心を持つことで免疫力が高まることは、コロナに立ち向かう時の「世界的常識」になりつつある。この意味でも、トランプ氏は二重の意味でコロナから国民を守ることに力を注いでいる。
「賢い支出」をしなければ、コロナ後、放出された資金が原因となって何らかのきっかけでハイパーインフレになる可能性もある。また財政赤字による崩壊もあり得る。智慧のある国だけが生き残ることになるが、日本はその中に入れるのだろうか。
今、本当に必要なのは、放漫財政を止め、かつ緊急事態には国民の命を守るところに重点投資するといった"構造転換"である。それには一般企業と同じ経営責任を政治家・公務員に取らせ、成果を上げた者には報酬で報いるといった対応を取ることも有効だろう。
それを目指すには、国民も「政府が国民よりお金の使い道を知っている」という思い込みを捨て去ることが必要だ。民間の自由な発想こそ、国を富ませることができる。それに自信と自覚を持つ国民性が求められている。
(長華子)
【関連書籍】
『人の温もりの経済学』
幸福の科学出版 大川隆法著
『地球を見守る宇宙存在の眼』
幸福の科学出版 大川隆法著
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