米大統領選をめぐるオクトーバー・サプライズとなったのは、ニューヨーク・ポスト紙による10月14日、15日付のスクープ記事だ。ツイッター社とフェイスブック社が、この記事の拡散を制限する措置を講じると、報道に対する"検閲"だとして波紋が広がった。
この問題について、トランプ大統領は、10月19日にアリゾナ州フェニックスで、次のようにレポーターに語っている。
「バイデンは犯罪者だ。バレたんだ。ラップトップを見たらいい。ほかの誰が犯罪者だというんだ? それを報道しない、あなたがたも犯罪者だ」「言わせてもらうが、ジョー・バイデンは犯罪者だ。ずっと前から、犯罪者だった。それを報道しない、メディアも犯罪者だ」
この全米を揺るがしたスクープ記事について、このたび当誌は、ニューヨーク・ポスト紙から翻訳権の許諾を受けた。以下に、記事の全文を、日本の読者に公開する。
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ニューヨーク・ポスト紙10月14日付
ハンター・バイデンがウクライナの実業家を、副大統領の父親に紹介したことを示す、動かぬ証拠のEメールが明らかになる
ハンター・バイデン氏は、ウクライナのエネルギー会社の幹部を、当時の副大統領だった父親のジョー・バイデンに紹介していた。それから1年も経たずに、父親のバイデンは、この会社への捜査を進めていた検察官の解任について、ウクライナ政府高官に圧力をかけていたことになる。以上は、ニューヨーク・ポスト紙に寄せられたEメールのなかで判明した事実だ。
この面会の事実は、これまでに明らかになっていなかった。ブリスマ社の顧問を務めていたバディム・ポザルスキー(Vadym Pozharskyi)氏から、2015年4月17日にハンター・バイデンに送信したとされるEメールのなかでは、感謝のメッセージが記されていたことが判明した。これは、ハンターがブリスマ社に月額5万ドルもの報酬で役員に迎えられてから、およそ1年後の出来事だった。
「ハンターさんへ。(ワシントン)DCにお招きくださり、あなたの父親と面会して、共に時間を過ごす機会を与えてくれて、ありがとう。本当に光栄なことで、うれしかったです。」と、Eメールには記されている。
ポザルスキー氏からハンター氏宛のEメール。
これより以前の2014年5月のEメールでも、ブリスマ社で3番目の地位にあったポザルスキーは、次のように記していた。ハンターに対して、会社の利益のために「あなたの影響力を、どのように行使してくれるのかについてのアドバイス」を求めたい、と。
このスクープとなる通信記録は、あるラップトップ・コンピューターから復元された大量のデータのなかから発見された。これまでのジョー・バイデンによる「息子の海外でのビジネスに関しては、息子とは何も話をしたことはない」との主張とは、矛盾が生じている。
このパソコンは、2019年4月にバイデンの地元デラウェア州の修理店に放置されたものだったと、店のオーナーは語っている。
他にも、パソコンから発見されたデータのなかには、ハンターと見られる人物が撮影されている12分間の猥褻な内容のビデオも含まれていた。ハンターは、麻薬中毒の問題で苦しんできた過去があることを認めているが、このビデオでは、氏名不詳の女性との性行為のなかで麻薬を吸引している姿が映されている。また、露骨に性的な内容となる大量の画像も含まれていた。
浸水で破損したMacbookproを修理店に持ち込んだ顧客は、店のオーナーが何度も連絡を取ろうとしたにもかかわらず、その後、代金の支払いのためにも、パソコンそのものやデータが修復されたハードディスク・ドライブを受け取るためにも、来店することはなかったとのことだ。
この店主は、顧客がハンター・バイデンであったとは確認できなかったとしているが、このパソコンには、『ボー・バイデン・ファンデーション』のステッカーが貼られていたとのことだ。この名称は、元デラウェア州司法長官だったハンターの亡くなった兄弟の名前にちなんで名づけられたものだ。
ニューヨーク・ポスト紙に寄せられたデラウェア州の連邦政府当局からの召喚状によれば、このパソコンとハードディスク・ドライブは、店主が、このデータの存在を連邦政府当局に通報した後、昨年12月にFBIによって押収されている。
FBIがパソコンとハードディスク・ドライブを押収したことを示す連邦当局からの召喚状。
しかし、店主は、機器の押収を受ける前に、ハードディスクのデータの複製をしておき、ルドルフ・ジュリアーニ(Rudy Giuliani)元(ニューヨーク)市長の顧問弁護士のロバート・コステロに渡したとも語っている。
9月下旬には、トランプ大統領元顧問のスティーブ・バノン(Steve Bannon)氏も、ニューヨーク・ポスト紙に、このハードディスク・ドライブの存在を語っていた。そして、今週の日曜日に、ジュリアーニ氏からニューヨーク・ポスト紙に、このデータのコピーが提供された。
当時のバイデン副大統領による2015年12月のキエフ訪問に際しては、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領とアルセニー・ヤツェニュク(Arseniy Yatsenyuk)首相に対して、アメリカからの10億ドルの借款の保証を停止するとの脅しにより、ヴィクトル・ショーキン(Viktor Shokin)検事総長の解任を求める圧力をかけた事実があったことが判明している。これは、ポザルスキーが、ハンター・バイデンに父親を紹介してくれたことを感謝したときから、8カ月足らずで起きた出来事だった。
バイデンは、2018年に外交問題評議会で、このように自慢げに語っていた。「私は、彼らを前にして言いました。私は、6時間後に発つ予定です。検事総長が解任されないならば、資金を提供することはできないと。」
「それで、あの野郎は解任されたのです」と。
ショーキン(元検事総長)の証言によれば、2016年3月の解任のタイミングでは、ブリスマ社を捜査するための「特別なプラン」が計画されていて、「ハンター・バイデンを含めた役員の全員を、尋問のほか犯罪捜査の対象とする予定となっていた」とのことだった。
ジョー・バイデンは、EU(ヨーロッパ連合)とも共有していた汚職問題を理由として、アメリカはショーキン(検事総長)の解任を望むと要求した。
しかし、ハンター・バイデンがブリスマ社の役員に就任した直後の、2014年5月12日付のEメールでは、ポザルスキーが、会社の利益のために政治的な影響力を行使させる目的で、ハンターを利用していたことが明らかになった。
この送信の表題は、「緊急の案件」とされていた。ハンターのビジネス・パートナーであり、当時、ブリスマ社の役員となっていたデボン・アーチャー(Devon Archer)も送信先とされていた。
ポザルスキーは、「新政権の人たちは、資金の獲得を狙いとして、非公式なかたちでN.Z.に猛烈に近づこうとしている」としていた。
このEメールにあるN.Z.が誰なのかは特定されていないが、ブリスマ社の創業者ミコラ・ズロチェフスキ(Mykola Zlochevsky)氏を指すとみられる。この人物のウクライナ語でのファースト・ネームは、(英語の)「ニコラス(Nicholas)」にあたるからだ。
このたかりが失敗すると、「1件、もしくは、それ以上の公判前手続き」のかたちで、「具体的な行動を進行させてきた」と、ポザルスキーは書いている。
「私たちには、至急、あなたのアドバイスが必要です。政治的な動機による動きを止めるために、あなたの影響力を行使して、何らかのメッセージやサインなどを送ってほしい」としていた。
ハンターは、アーチャーと共にカタールのドーハに滞在しているとして、「ブリスマ社に対しての(何かあるならば)正式な容疑」について、さらなる情報がほしいと返信している。
「このような会社に対する攻撃の背後にいるのは、結局、誰なのか? 現政権のなかで、この攻撃を止めさせることができる人物は、誰なのか?」とも記している。
このやり取りがあったのと同じ日に、ブリスマ社は役員会の人数を増員して、ハンター・バイデンの役員就任を発表していた。ブリスマ社のウェブサイトから、すでに削除されたニュース・リリースでは、「法務部門で、国際組織との関係で会社を支援する業務」を所管するとされていた。
複数筋によると、ハンター・バイデンは、実際には2014年4月に役員に就任していたとのことだ。
昨年にハンターの弁護士は、ハンターが「経営陣に加わっていたことはない」し、「会社の法務部門の責任者だったこともない」と語っている。
ハンター・バイデンのポザルスキーとのやり取りから約4か月後には、アーチャーが、「増税がブリスマ社の生産に与える影響」と題した一連のEメールを、ハンターに転送していた。そのなかで、ポザルスキーは、ウクライナの内閣が、新たな税法案を議会に提出したことに言及していた。
ポザルスキーは、「もし、この法律が施行されることになれば、未熟な段階にある民間ガス会社による生産活動は、完全に破壊されることになってしまう」と書いていた。
2014年9月24日付のEメールでは、ポザルスキーは「ここキエフのアメリカ大使館のほか、アメリカのアモス・ホッホシュタイン(Amos Hochstein)氏のオフィスとも情報を共有したい」とも記していた。
当時、ホッホシュタインは、国務省で国際エネルギー問題の特使兼コーディネーターに任命されたばかりだった。
ウクライナの国営エネルギー企業のナフトガズ・グループ(Naftogaz Group)の社外役員に、ホッホシュタインの就任が発表されたのは、2017年12月だった。月曜日には、辞任が発表されている。
ホッホシュタインは、キエフ・ポスト紙の論説記事で、「問題のある取引を通じて私腹を肥やそうとする、オルガリヒの政治的な圧力や努力に対して、会社としては終わることのない戦いに時間を費やしていた」と書いている。
ジョー・バイデンは、ハンターの海外ビジネスに関して、何も話し合ったことはないとしているほか、ブリスマ社に関しては、2人とも何らの利益相反も、違法行為もなかったことを、繰り返し主張してきた。
昨年2月のNBCの番組「トゥデー」での出演でも、司会者のサバンナ・グスリー(Savannah Guthrie)から、「(ハンターが)そのような地位に就いていたことは、誤りだったのではないですか。その会社が、あなたにアクセスすることを求めていた事実を知っていたならば」と質問されたときには、バイデンは怒りの表情をあらわにしていた。
「いえ、それは事実ではないです。何のことをおっしゃられているのか、あなたにはよく分かっていないようですが」と、ジョー・バイデンは答えていた。
昨年12月にアイオワ州で開催された、民主党予備選のタウンホールでも、ジョー・バイデンは、ある男性から、ハンターをウクライナに関わらせたことを追及されていた。「天然ガス会社の仕事に就いていたというが、天然ガスにも、何にも経歴はなかったはずだ。目的だったのは……(副)大統領とのコネだったはずだ」と。
このときにもバイデンは、「あなたは、嘘つきですよ。それは事実ではないし、そのようなことを指摘している人はいません」と、憤りを見せていた。
さらにバイデンは、その男に歩み寄りながら、非難を続けた。その男を「太っちょ」と呼び、「一緒に、腕立て伏せでもしようか」と食ってかかっていた。
FBIの報道官は、パソコンとハードディスク・ドライブをデラウェア州の連邦司法当局が押収した件についての質問に対しては、「当局において捜査が行われているかについては、肯定もしないが、否定もしない」と答えている。
ハンター・バイデンの顧問弁護士は、この件についてのコメントを拒んでいるが、その代わりにジュリアーニを非難している。
ジョージ・R・メシレス(George R. Mesires)弁護士は、ジュリアーニに関して、「彼は、ロシアの諜報機関とつながる人たちに公然と依拠して、バイデン家に対する、まるで信用ならない陰謀論を広めようとしている。」と語った。
ポザルスキーも、ジョー・バイデン陣営も、コメントの求めには応じていないほか、ホッホシュタインとは連絡がついていない。
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このスクープ記事で取り上げられた、ハンター氏の海外ビジネスの実態については、現在、YouTube番組「ザ・ファクト」で公開中のドキュメンタリー映画『ドラゴンに乗って:バイデン家と中国の秘密(Riding the Dragon: The Bidens's Chinese Secrets)』(日本語字幕版)でも映像化されている。
ドキュメンタリー映画「ドラゴンに乗って:バイデン家と中国の秘密 (原題: RIDING THE DRAGON: The Bidens' Chinese Secrets)」【日本語字幕版】
(藤井幹久 幸福の科学国際政治局長)
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2020年10月10日付本欄 バイデン候補の中国マネー疑惑を描いた映画「ドラゴンに乗って」(日本語版)が公開