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《本記事のポイント》

  • 米司法省が独禁法違反でグーグルを提訴、米アップルとの契約などが争点に
  • アメリカではIT大手による言論検閲が問題視され、議会は法改正に向け動き出している
  • グーグル提訴は、本丸の言論検閲問題を見据えた"前哨戦"か

米司法省が20日、「反トラスト法(独占禁止法)」違反の疑いで米IT大手グーグルを提訴した。

IT大手を相手取った大型訴訟は、1998年に反トラスト法違反の疑いで米マイクロソフトが訴えられて以来、約20年ぶり。今後、グーグルが事業分割される可能性もあるという。

主な争点となっているものとして、例えば米アップルとの契約がある。

司法省は訴状で、グーグルが、米スマホ市場で約6割のシェアを占めるアップルに最大で年間120億ドル(約1兆3000億円)を支払い、グーグルの検索サービスを端末の標準設定にしていることを問題視。これにより検索市場から他社を締め出し、「独占を維持してきた」と指摘している。

加えて、世界のスマホの約85%に搭載されているグーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」についても、無償でスマホメーカーに提供する代わりに、グーグルの検索サービスを標準設定に組み込むよう誘導した疑いがあるとしている。

つまり、今やインターネット検索の約6割を占めるモバイル端末に自社の検索サービスを組み込み、世界シェアトップの地位を揺るがぬものにしてきたということだ。

司法省は、一連の行動が他者を排除する「反競争的行為」であり、反トラスト法に反するとして、11の州と共にワシントンの連邦地方裁判所に提訴した。

アメリカで懸念が高まる、SNSによる言論検閲

日本の報道ではあまり触れられていないが、この動きの背景には、IT大手の"言論検閲体質"を改める狙いがある。

トランプ政権の発足後、アメリカではツイッターやフェイスブックなどSNS上で保守派の言論が検閲されているという声が高まっている。

米ニューヨーク・ポスト紙が報じたハンター・バイデン氏による汚職疑惑のスクープに対し、ツイッター社とフェイスブック社がブロック措置を講じたのは象徴的だ(関連記事参照)。両社は、後に虚偽と判明した反トランプ的なコンテンツを検閲しなかった過去があり、保守派から「ダブル・スタンダード」だと批判を受けている。

今回、白羽の矢が当たったグーグルについても、検索エンジンで保守的な言論が表示されにくくなっているという問題が指摘されている。

こうした検閲は大手ITが市場を独占し、ライバルがシェアを広げにくい環境をつくっている結果である──。これが、今回の動きの奥にある米政府の本音だ。

恣意的な検閲を許してきた法的根拠にメスを入れるトランプ大統領

米政府は、反トラスト法による提訴を前哨戦としつつ、直接、検閲問題に切り込む"二の太刀"を用意している。それが、「通信品位法230条(第230条)」の見直しだ。

同条は、ユーザーの投稿に対するソーシャルメディア企業の法的責任を免除する一方で、企業側に投稿の制限を許すというもの。1990年代当時、立ち上がり期にあったソーシャルメディア企業を保護するためにつくられたが、結果として、企業側が自らの裁量で投稿を規制または削除してもよいと解釈できる状況を生み出している。

こうした現状を踏まえトランプ大統領は5月、第230条によって保護されているソーシャルメディア企業を規制する大統領令に署名。同条について「削除または変更」する法律の制定を議会に求めた。

一連の流れを受け、米議会上院は10月1日、フェイスブック、ツイッター、グーグルの3社の経営トップに召喚状を発行すると決議。「ネット上の保守的な意見を抑圧したり検閲したりしている」とし、第230条について公聴会で証言を求める考えだ。

IT大手を守ってきた法的根拠にいよいよ、メスが入らんとしている。

IT大手による検閲について、日本でも問題提起する声はあるものの、大手メディアではほとんど報じられないのが現状だ。危機感を持って声を上げなければ、一部の企業に世論が誘導されるという事態にもなりかねない。自ら考え発信し社会に貢献するという、人間が有する自由と責務を、顔の見えないIT大手に奪われることのないよう、働きかける必要がある。

(片岡眞有子)

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