『聖書』の「ヨハネの黙示録」第9章には、第5の御使い(天使)がラッパを吹くと、さそりの力を持ったイナゴが現れると書かれている。そして、そのイナゴはすぐには人間を殺さず、5ヶ月間、さそりに刺されるような苦痛を与えるという。
こんな描写を彷彿とさせる現象が起きている。
すでに一部報道されているように、現在、インドやパキスタンは、サバクトビバッタの脅威に晒されている。その数、およそ4000億匹だという。
1日で3.5~100万人の食料を奪う
サバクトビバッタは、過去、たびたびアフリカ、中東、アジアに被害を与えてきた。このバッタは普通のバッタと比べて体が大きい。成虫のオスの体長は4~5センチメートル、メスの体長は5~6センチメートルである。
飛行スピードが速く、移動距離が長い。1日に約150キロメートルも行軍する。毎日、自分の体重分の約2グラムを食べるという。もし、現在の勢力を保てば、1日、最低でも約3.5万人の食料(約100万人の食料説もある)を食い荒らすと言われる。
サバクトビバッタの一部は、すでに東アフリカへ侵入し、ケニア・エチオピア・ソマリアなどに甚大な被害を与えた。
他方、別の一部が、目下、東へ向かって進軍を続けている。縦60キロメートル、横40キロメートルにもおよぶ大軍団である。向かう先は……中国だ。
中国共産党にとって、この進軍こそが新たな脅威となってきた。
6月までに500倍!?
バッタの中国への侵入ルートは、3つあるという。
(1)インド・パキスタンを経由しチベットに侵入するルート。(2)ミャンマーから雲南省へ侵入するルート。(3)カザフスタンから新疆ウイグル自治区に侵入するルートである。
国連食糧農業機関(FAO)は、サバクトビバッタが6月までに、500倍まで増えると推計した。現在の軍団が縦横40キロメートル×60キロメートルと言われているので、単純に500倍すれば120万平方キロメートルの面積となる。これは中国の国土面積の8分の1。日本の国土面積の3倍以上だ。あくまで大雑把なイメージにすぎないが、少なくともとんでもない規模だ。
中国国家林草局は2月26日、サバクトビバッタの侵入を防御するよう緊急通知を発令している。北京政府の危機感の表れである。
挫折した「鴨軍団」
実は、2月下旬、中国共産党は、友好国パキスタンへ浙江省から10万羽の鴨軍団を送り込もうとした。鴨はバッタを取って食べる。
しかし現実問題として、沿海部の浙江省からだと中国大陸を横断してパキスタンまで行かねばならない。その距離は数千キロもある。また、チベット高原やヒマラヤ山脈を越える必要がある。中国政府が、鴨軍団をパキスタンまで空輸するのならばともかく、地上を行くのはまず不可能だろう。
さらに、たとえ鴨軍団をパキスタンへ空輸したからと言って、果たして、鴨軍団が数千億のサバクトビバッタを退治できるとも思えない。逆に、鴨軍団はサバクトビバッタに逆襲される公算が大きい。
結局、北京による鴨軍団派遣という発想はユニークだったが、「絵に描いた餅」に終わっている。
次々に北京政府を襲う天災
まさに満身創痍の北京政府である。
2018年8月以降、習近平政権は「アフリカ豚コレラ」(ASF)に悩まされた。中国は、世界豚肉生産量の約半分を生産しているが、豚および豚肉の生産量が40%以上も減っている。そのためか、食料品全体の値段が高騰した。中国にとって経済的ブローとなっている。これが第1の天災である。
次に、2019年12月、武漢市で「新型肺炎」が発症した。翌年1月から現在に至るまで「新型肺炎」は中国全土に拡大している。「新型ウイルス」の致死率はそれほど高くはないが、SARSと比べで感染力が強い。
習近平政権は、人の移動を厳しく禁じたので、経済活動は著しく制限された。そうでなくても中国経済は停滞しているので、「新型肺炎」は景気悪化を招いている。これが第2の天災である。
そこに、第3弾の天災であるサバクトビバッタが中国へ襲来したら、習政権はもたないだろう。
よく知られているように、習国家主席は、まるで"中国共産党王朝"の皇帝(天子)にように振る舞っている。しかし、"徳を失った天子"は、天によって滅ぼされる運命(「易姓革命」)にあるのではないだろうか。
拓殖大学海外事情研究所
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
【関連書籍】
大川隆法著 幸福の科学出版
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