街が荒廃した米デトロイトは、オポチュニティ・ゾーンに指定されている。画像は/ Shutterstock.comより。

《本記事のポイント》

  • 繁栄できない街を再活性させる
  • ふるさと納税より、先進的な取り組み
  • 富裕層も貧困層もウィンウィンに

トランプ米政権が2017年に制定した不動産税優遇措置「オポチュニティ・ゾーン」により、サウスカロライナ州で、新しく5400万ドル(約60億円)のハイテク街が生まれたと、米共和党上院議員ティム・スコット氏がこのほど米誌ワシントン・イグザミナーに語った。これに対し、トランプ大統領はツイッターで、「ティム、よくやった」と称賛している。

繁栄できない街を再活性させる

日本ではなじみがない、オポチュニティ・ゾーンとは、単なる減税措置ではなく、長期投資によって衰退する街の再開発や雇用創出などを促すというもの。仕組みの中身はこうだ。

各州知事が、一定の条件を満たした低所得地域を「オポチュニティ・ゾーン」に指定する。条件には、「地域の貧困率が20%以上」「世帯収入の中央値が周辺地域の80%未満」などがある。簡単に言えば、アメリカの繁栄から取り残された地域だ。現在、約8700カ所が指定され、ハリケーンの被害を受けたプエルトリコ全島も対象になっている。

投資家は、株式や投資信託などで得たキャピタルゲインを180日以内に、オポチュニティ・ゾーンを開発するファンドに投資すれば、税制で優遇される。ファンド側は、その資金の90%以上をゾーンに投資し、街の活性化を図る。投資される地域は、雇用創出に加え、手頃な価格の住宅や起業の増加、犯罪者の減少などの恩恵を受けられる。

ふるさと納税より、先進的な取り組み

このプログラムのメリットは、連邦政府がほとんど関与しないことだ。

投資家は、政府や州などから、どのエリアに投資すべきか監督されない。そのエリアに引っ越しする必要もなく、ただキャピタルゲインを先のファンドに投資すればいい。それにより、キャピタルゲインに関わる税制の優遇措置を受けられる。

日本では地方創生の一環として、「ふるさと納税」が広がっている。だが、ふるさと納税はあくまで一時的な効果であり、その受益者も限られた人にすぎない。

富裕層も貧困層もウィンウィンに

日本では、「富裕層から富を奪い、貧困層にバラまけばいい」という意見が散見される。そうした意見の感情は理解できるが、明らかな問題は「持続可能な政策ではない」ということだ。

今回の税制のように、民間のプロ投資家の知恵を介在させれば、税金の費用対効果(コストパフォーマンス)を飛躍的に高めつつ、社会的弱者を救うことができる。日本にも、富裕層と貧困層がウィンウィンになれる優れた税制が必要だ。

(山本慧)

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