《本記事のポイント》

  • カナダが先進国で初めて嗜好品として大麻を解禁
  • 販売組織の収入源ストップと税収増が期待されているが依存症リスクに心配の声も
  • 日本のカジノ法も依存症などのリスクが大きいのに合法化するのは大麻解禁と似ている

カナダが17日から、嗜好品としての大麻の所持・使用を合法化した。先進7カ国(G7)で初めての例となる。

大麻は政府が許可した生産施設や販売店などで取り扱われることになる。成人1人につき最大30グラム所持することができ、4株までなら栽培も可能。合法化した17日には約100の販売店がオープンし、大麻を求める人々が長蛇の列をなした。

一部地域では品薄となり、数時間並んだ末に「売り切れ」と断られる客の姿もあったという。

大麻が合法化されている国は、他に南米ウルグアイのみ。アメリカでは首都ワシントンDCなど9州で合法化されているが、連邦法では禁止されており、国としては認められていない。大麻合法のイメージが強いオランダも同様で、一部都市のみで合法だ。

なぜカナダは、国をあげて大麻の合法化に踏み切ったのか。

大麻解禁で犯罪組織の資金源を断ち、税収増?

カナダ政府は、合法化の大きな理由の一つとして「大麻が犯罪組織の資金源にされることを防ぐ」ことを挙げている。トルドー首相は6月の記者会見で、「犯罪組織が(大麻の密売により)年60億カナダドル(約5000億円)もの利益を得ていると推計されている」と述べ、合法化の正当性を訴えた。

合法化のもう一つの理由は「経済効果」。カナダ金融大手CIBCワールド・マーケッツは、合法化により年間で最高50億カナダドル(約4300億円)もの税収が見込めると試算している。トルドー氏は、合法化によって得た税収を、依存症や健康問題の対応に使うという考えを示している。

カナダ政府がこのような「大義」をもって踏み切った大麻合法化だが、以下のような指摘もされている。

まず、「犯罪組織の資金源を断つ」という効果については、合法大麻には税金などが課せられるため、違法大麻よりも高額になる。そして現在は合法大麻の供給が不足している。そのため、「犯罪組織による密売は減らないのでは」という意見も根強い。

さらに、「合法化による税収を依存症・健康問題のために使う」というのは、政府が大麻の悪弊をはっきり認めていることに他ならない。「税収のために国民の健康を犠牲にしていいのか」という批判は免れない。そもそも、対策に税収を使うくらいなら、もともと大麻解禁しなければいいだけの話だ。

日本の「カジノ法」もリスクを孕みながらのギャンブルの合法化

似た構図が日本にもある。「統合型リゾート(IR)整備推進法」、いわゆるカジノ法だ。

カジノ解禁によって、経済の活性化や税収増などが見込まれてもいる。しかし、ギャンブル依存症の増加や治安悪化などが懸念され、国民や与野党でも意見が別れている。

入場回数の制限や、入場料6000円の徴収など、「依存症対策」も進められているが、そもそも、依存症などの懸念があるものを、経済活性化の手段として国が認めることが問題ではないだろうか。

刑法185条(単純賭博罪)では、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する」とされている。賭博罪の存在理由として、「人や社会に害を与える」という主旨を述べた判例もある。たとえカジノが経済の活性化に貢献し、政府が依存症対策を施しても、賭博の「害」がなくなるわけではない。

大麻も同様だ。欧米など嗜好用大麻が合法化されていたり、所持や使用に刑罰がなかったりする地域やその近隣国では、大麻が比較的容易に入手できる。結果、中高生など未成年による大麻吸引が社会的な問題となっている。また、大麻を混ぜ込んだクッキーやブラウニーなどのスイーツを幼児が誤って食べ、死亡する痛ましい事件も多い。

大麻解禁に踏み切ったカナダが今後、どのような道を歩むのかは注視したいが、日本も経済活性化や税収増などに目がくらみ、カジノ設置というリスクの高い政策に踏み切るべきなのか、カナダの大麻解禁をきっかけにもう一度、考えるべきではないか。

(駒井春香)

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