三角屋根の建物が旧武藤山治邸(兵庫県神戸市)。
2018年11月号記事
「将の器」がGDPを再び伸ばす
「人格経営」のすすめ Part 2
contents
人材不況 - 「将の器」がGDPを再び伸ばす「人格経営」のすすめ Part 2
Case(1)
人材不況 1
無責任体質
責任の器が広がれば経済は成長する
カネボウ 武藤山治
Sanji Muto
自分の責任ではない。あの人材で、あの環境では、仕方がなかった―。
「人のせい、環境のせい」にする無責任体質が日本全体に蔓延している。その例は、スルガ銀行の不正融資や東芝の不正会計など、枚挙にいとまがない。
また、歴代政権は選挙に勝つためにバラまきを続け、1000兆円を超える借金をつくり、財源がなくなると、増税の必要性を訴える。
財界を代表する日本経済団体連合会(経団連)は、本来であれば反対すべき立場であろうが、政府を刺激しないように、"忖度"し、増税に賛成している。
そのような「責任をもって行動しない姿勢」が、日本経済の低迷につながっている。
今のリーダーに必要なのは、「責任の範囲を広げる姿勢」だろう。かつてそれを実践し、「責任の男」と呼ぶべき人物がいた。鐘淵紡績(現・カネボウ)の社長を務めた武藤山治(1867~1934年)だ。武藤は鐘紡を戦前最大の紡績会社にした「中興の祖」として知られる。
福沢諭吉の直弟子だった武藤は、福沢が説いた「独立自尊」を一生涯貫き、社員を家族のように愛する経営を主導。「日本的経営の祖」と呼ばれている。
ここでは、「責任の器」の広げ方が分かる3つのエピソードを紹介する。
奴隷工場を天国的な場所に
1つ目は、社員の幸福を考えて福利厚生を整え、奴隷工場を天国的な場所に変えたことだ。
武藤が入社した1894年、紡績工場は今でいう3K(きつい、危険、汚い)が当たり前だった。女性の工場労働者は奴隷同然に扱われていた。
労働者の生活を守るのが、経営者としての責務だ―。
社会主義と戦う
「公の精神」が経済を浮上させる
リーダーの気概が日本を変える