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《本記事のポイント》
- 日中電話会談で両首脳が非核化を評価
- 米紙記者が平和ムードを警戒し、北朝鮮の国民も怪訝に思っている
- 制裁解除の流れにならないよう、注意が必要
安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による初の電話会談が、4日に行われた。
両首脳は、南北首脳会談で署名された「板門店宣言」に北朝鮮の非核化が盛り込まれていたことを評価する考えで一致。安倍首相が、国連安全保障理事会による制裁決議の履行など、最大限の圧力を維持するよう呼びかけたということだ。
南北首脳会談での「非核化」を評価する向きが強いが、北朝鮮が何度も約束を反故にしてきた歴史を忘れてはならない。本欄では、平和ムードを警戒する米識者の声を紹介する。
27年に渡って騙されてきた歴史
保守系シンクタンク「Ethics and Public Policy Center」の上級研究員を務めるモナ・チャレン氏は4日、米誌ナショナルレビューで、金正恩朝鮮労働党委員長が父親や祖父と同じ行動を取る危険性を訴えた。
1991年の「朝鮮半島非核化宣言」や、2005年に行われた「6カ国協議」での非核化声明に触れ、このように述べている。
「北朝鮮は27年にわたって非核化という同じ約束を売り続け、その度によい値を引き出してきた。『交渉の席に着く』ことは北朝鮮人にとってそんなに画期的な出来事ではなく、そうした交渉の場は彼らに素晴らしい結果をもたらしてきた。問題は、勝利を主張することを好む私たちの大統領が、あの国の政権から厳粛な約束を取り付けることに何ら意味がないということを理解しているか否かということだ」
また、米コラムニストのカール・トーマス氏も1日付のFOXでこのように主張した。
「"大変立派な"(トランプ氏の言葉だ)北朝鮮の独裁者・金正恩氏に会う前に、過去の米大統領の希望的観測を利用した手段を含め、トランプ大統領はあの国の二枚舌と騙しの歴史を学びつくすべきだ」
北朝鮮の国民すら「非核化」を信じていない
平和ムードを警戒する声がアメリカ国内であがっているが、北朝鮮国民でさえ金氏の融和姿勢に懐疑的だという。
米ワシントンDCに本部を置く米政府系「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は4月24日、南北会談に関する北朝鮮国民の声を報じた。南北会談後に朝鮮労働党が核実験の終結と核実験場の閉鎖を国民に告知。これを受け、北朝鮮の国民が匿名でRFAに寄せたものだ。
「ニュースを聞いた住民は奇妙に思っています」「朝鮮労働党は数十年にわたって朝鮮民主主義人民共和国は、核の力によって自国の尊厳を保つことができると宣伝してきました」「もし突然核兵器の開発を止めれば、私たちは国がアメリカや国際社会からのプレッシャーに屈服したのかと思います」
北朝鮮の国民ですら信じていない「非核化」を、国際社会が易々と信用するわけにはいかない。
平和ムードに流されてしまえば、トーマス氏の言う「二枚舌と騙しの歴史」を繰り返すことになるだろう。米朝会談の行方が注目される中、万が一にもドナルド・トランプ米大統領が制裁解除に踏み切るようなことがないよう、日本からも説得する必要がある。
(片岡眞有子)
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