《本記事のポイント》
- 宮城県の60代女性が、知的障害を理由として国に不妊手術を強制されたと訴えた
- 障害者に対する差別や「優生思想」が今も残っていると指摘する声もある
- 障害があっても魂は健全。障害を持って生きる意味を考える必要がある
「旧優生保護法」を基に、知的障害を理由とした不妊手術を強制されたことについて、宮城県の60代女性が1月30日、国に1100万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
「旧優生保護法」は、「不良な子孫の出生防止」を掲げて1948年に施行された。同法は、遺伝性疾患や精神障害を持つ人に対して強制不妊手術を認めている。
同法は、生物の遺伝構造を改良して人類の進歩を促そうとする「優生思想」に基づき、ナチス・ドイツの「断種法」のような差別につながると批判され、96年に優生手術の項目が削除され、「母体保護法」に改定された。その間、全国で約1万6500人の不妊手術が行われたとされるが、国の責任を問う訴訟は全国初となる。
今回、宮城で訴えを起こした女性は、1歳の時に受けた麻酔治療の影響で重度の知的障害が残ったという。15歳の時に「遺伝性精神薄弱」を理由に不妊手術を受け、30歳前に手術が原因とみられる卵巣膿腫で右卵巣を摘出。
子を産めない体になったことを理由に、縁談が破談になるなどしたとして、「国に強制された不妊手術は、個人の尊厳や自己決定権を保障する憲法に違反するにもかかわらず、政府と国会が救済を放置し続けた」と主張している。
「優生思想は今も残っている」と主張する原告
発話に障害を持つ女性に代わって原告を務めた義理の姉は、2016年に神奈川県相模原市の知的障害者施設で発生した入所者19人が刺殺される戦後最悪の大量殺人事件を引き合いに、「優生思想は今も残っている」と語った。
元施設職員の植松聖被告は、「障害者は不幸をつくる」「重度障害者は安楽死させるべき」などと供述し、優生思想との関連が話題になった。
また、日本で2013年に母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)が導入されると、胎児に障害の可能性があると診断された妊婦の約96%が中絶を選択したという(NIPTコンソーシアム発表)。これは、「障害者として生まれるのは不幸」「障害児を育てたくない」という見方が支配的なことをうかがわせる。
障害を持って生まれ、生きる意味とは
今回の訴訟は、当時の"常識"で制定された法律に基づくもの。優生手術については、当時、合法だったことは確かである。
ただ、「優生思想」に基づいて障害者が差別されたり、生まれる権利が奪われたりすることについては、宗教的な観点から是非を判断する必要がある。
大川隆法・幸福の科学総裁は、「人間は単なる肉体ではない。肉体に宿り、肉体を支配している、魂、心というものがある」「障害を持っていても、魂としては完全」と説いている。著書『愛と障害者と悪魔の働きについて―「相模原障害者施設」殺傷事件―』のあとがきで、次のように述べている。
「 障害者は、人間に、足るを知り、幸福とは何かを教える、魂の教師の役割を持っている。また不当な、劣等感・失敗感・挫折感により、神への信仰を見失った、競争社会のすさんだ人々を、救済する役割も障害者たちには与えられている。そして彼らの中には現実の天使も身を隠して潜んでいる 」
大川総裁はまた、あらゆる人は、生まれる前に人生の計画を立て、両親や家庭環境を自ら選び、人生の目的と使命を持って生まれてくることも説いている。魂を磨くことを目的として、人生計画の中で、あえて肉体に障害を持って生まれることを選ぶ人もいるという。
「障害者として生まれてくることは不幸である」と決めつけるのではなく、障害を持って生まれた人生の意味について考える必要があるのではないか。
(小林真由美)
【関連書籍】
幸福の科学出版刊 『愛と障害者と悪魔の働きについて』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1713
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2016年10月号 障害者の生きる意味 - 相模原・障害者施設殺傷事件