平昌五輪とパラリンピックの公式マスコットたち。

《本記事のポイント》

  • 平昌五輪で南北合同チームを結成し、開会式でも合同入場する可能性がある
  • 北朝鮮は韓国を取り込もうとしているが、トランプ米大統領の真意は不明
  • 北朝鮮を核放棄させるには、金体制の崩壊を目指すべき

韓国と北朝鮮は17日、2月に開幕する平昌(ピョンチャン)五輪への北朝鮮の参加について協議するため、南北次官級会談を行った。

会談では、アイスホッケー女子で南北合同チームを結成することや、開会式で「朝鮮半島旗」を掲げて南北合同で入場行進すること、北朝鮮は約230人の応援団を派遣することなど、11項目について合意した。

南北合同チームが実現すれば、五輪史上初めてのこと。しかし、これには韓国内で反対論も起きている。

例えば、アイスホッケー女子韓国代表のサラ・マレー監督は、「五輪が迫る中でこうした(合同チーム結成の)話が出るのは衝撃的だ。新たな選手を加えれば、組織力を危うくする」と語る(18日付読売新聞)。

また、韓国アイスホッケー連盟の幹部も、ロイター通信の取材に「選手たちは、ばかげたアイデアだと激怒している。政府が何の前触れもなくわれわれを選び、赤の他人と一緒に五輪でプレーしろと言うなど、まったく言葉も出ない」と怒りをあらわにする(17日付ロイター電子版)。

北朝鮮に調略されつつある韓国

北朝鮮との関係改善を望む韓国が北朝鮮に取り込まれつつあるように見える。世論調査でも、韓国人の80%以上が北朝鮮の五輪参加に賛成だという(韓国テレビ局SBSが11日に発表した調査)。

北朝鮮は韓国を味方に取り込み、核保有国としての地位を維持することを目論む。そしてこのまま南北の融和路線が続けば、それが実現してしまう可能性すらある。

では、トランプ米大統領はどうか。韓国と北朝鮮の対話に期待感を示し、対話が進んでいる間は、軍事行動を控えるとしている。だが、これは北朝鮮を欺いているだけかもしれない。味方の被害をできるだけ減らすため、武力行使の兆候を相手国に悟られてはならないからだ。トランプ氏が腹の底でどう思い、どんな決断を下すのかは、誰にも分からない。

北との対話で解決しようとした、過去の教訓

振り返ってみれば、1994年ごろ、北朝鮮の核開発疑惑が浮上し、当時のクリントン米政権も、核施設への空爆を本格的に検討していた。

しかし、米軍のシュリガシュビリ統合参謀本部議長が、「開戦90日間で、米軍は5万2千人、韓国軍は49万人の死者を出す。戦争費用は610億ドルを超え、最終的に戦費は1千億ドル以上になる」というシミュレーション結果を報告。駐韓米軍のラック司令官も、「アメリカ人8万~10万人を含め、民間人100万人の死者が出る」と報告した。

そのため金泳三(キム・ヨンサム)韓国大統領は攻撃に反対。その後、北朝鮮との対話路線が進み、金日成・国家主席は、核開発の凍結を受け入れた。しかし、その約束が守られることはなかった。

過去の教訓をふまえれば、対話によって北朝鮮が核開発を止める可能性は、「ゼロ」と言っていい。核を放棄させるには、金体制の崩壊を目指すべきであろう。

(山本泉)

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