2017年11月号記事

編集長コラム Monthly Column

衆院選のミカタ 1 政治

腐敗し、勇気のない政治から
清潔で、勇断できる政治へ

今回の総選挙の本当の争点は何か。本誌編集長が解説する。

9月の臨時国会で衆院が解散され、10月末、総選挙を迎える。安倍晋三首相は、消費税を教育無償化などに使えるようにする「全世代型」社会保障の実現を第一の争点にするという。

写真:ロイター/アフロ

教育も政府丸抱え

消費税の収入は、基本的に社会保障に使うことになっている。

日本の社会保障は、リタイアした父母計4人に対し、現役夫婦が政府を通して年間約1千万円の"仕送り"をしている計算になる(*)。通常であればほとんどの家庭が破産するが、それを国債発行でまかない、1千兆円以上の政府の借金が積み上がった。

政府・自民党は選挙のたびに大盤振る舞いし、高齢世代への「合法的買収」を重ねてきたのだ。

「全世代型」社会保障は、大盤振る舞いを教育にまで広げるもの。 安倍首相は「高等教育を含む教育の無償化」に意欲を示す。実現すれば、大学教育などがすべて政府の丸抱えになる。

日本では、文科省が私立大学にも同じような教育内容を押しつけるうえ、大学開設には文科省OBの天下りがもれなく付いてくる。その腐敗の根深さは、今年初めから盛んに報道された。

(*)原田泰・元早大経済学部教授の試算。

北朝鮮並みの「マイナス行政」

高齢者も子供も政府が面倒を見る社会は、政府の"管理"が隅々にまで行き渡る社会だ。

それを運営する税金は、所得税、法人税、相続税、そして消費税も世界最高水準にある(軽減税率の品目が少ないため)。

日本国民は「財産権」、つまり「稼いだお金を自分で使う権利」を奪われ、政府に使い道を決められている状態にある。

それは、日本が資本主義の精神を発揮しにくい環境であることを意味する。

その結果、25年間、日本の国内総生産(GDP)は約500兆円からほとんど増えていない。

似たような国は北朝鮮ぐらいだ。1990年ごろから150億ドル(約1兆7千億円)前後で横ばいを続ける。国民を飢えさせている北朝鮮と同レベルの仕事しかできないとは恐ろしい。

幸福の科学の大川隆法総裁は9月の法話「自らを人財に育てるには」で、こう指摘した。

「(日銀の) 『マイナス金利』に『マイナス行政』。これがあって日本の活力は失われ続けているのです

自民・公明政権の「1億総買収」の例

1 年金・高齢者

・70代の年金受給者は、納付額より約3000万円多く支給

・年金受給資格の期間を短縮 (納付期間が25年から10年に)

・臨時福祉給付金 (低所得者に1万5千円を支給)

・プレミアム付き商品券 (1~3割安く買い物ができる)

2 医療

・制度改革を怠り、借金で保険制度を維持 (70歳以上の保険制度は自己負担を6割にしても成り立たない)

3 教育

・子育て給付金 (子供1人につき、3千~1万円を支給)

・給付型奨学金の拡充へ

・大学授業料の減免措置の拡充へ

・幼児教育・保育の無償化? (約1兆円の財源が要る)

・大学教育の無償化? (約3兆円の財源が要る)

「自由は創造主から」

ほとんど報道されないが、アメリカのトランプ政権下では、雇用が予想以上に増え、株価が上がり続けている。トランプ大統領は、法人税を35%から15%に下げるなどの大減税と、大胆な規制緩和を進めており、その期待も大きい。

「独立宣言以降、アメリカは『自由は創造主からもたらされる』と確信してきました」

「私たちの政権は、その権利をワシントンから国民へ返そうとしているのです」

トランプ氏は今年7月の独立記念日を前にこう語った。

この言葉は、哲学者ジョン・ロックの財産権の思想をよく表している。「神の創造物である人間が、生命や財産を守るために政府をつくるが、守れないなら政府をつくり直せる」という思想だ。

北朝鮮並みの「マイナス行政」の日本こそ、政府のつくり直しが待ったなしだ。

米大統領が日本の元首?

安倍首相は「北朝鮮への圧力強化継続」と「憲法9条への自衛隊明記」も争点に加えようとしている。国防を争点にするのは真っ当な姿勢に見える。

ただ、安倍首相は北のミサイルが飛ぶたびに「万全の措置をとっている」と繰り返すものの、北が複数のミサイルを同時に撃つだけで、自衛隊は大混乱に陥る。

「万全」は日本のどこにも存在しない。現実はアメリカの軍事力頼みでしかない。

北のミサイル問題で奇しくも明らかになったのは、 日本はアメリカの準州グアムの立場と変わらない ということだ。

グアムの知事は、「グアムは安全で、米軍がほぼ100%の確率で迎撃できる」と「万全」をアピールしていた。

グアムは戦後に自治が認められ、知事は選挙で選べるが、大統領選挙の投票権がない。連邦議会に議員を送る権利もない。

「何かあったら米大統領が守ってくれる」のはグアムも日本も同じ。 一般的に国防の最高責任者が元首であることを考えれば、事実上、日本の元首は米大統領なのかもしれない。

「国民を守らない」日本

国家には「主権」がある。ひと言で言えば、「国内のことは他国に干渉されずに意思決定できる権利」だ。

領土と国民を守るための「交戦権」は、主権の中の主権。しかし憲法9条は「国の交戦権は認めない」とうたう。つまり、「国民の生命を守りません」と堂々と宣言している。これがグアムと同じ立場をつくっている。

安倍首相の9条改正の提案では交戦権の否定がそのまま残るので、「日本もグアムと一緒に守ってください」ということでしかない。「マスコミの総攻撃にあい、選挙に勝てないから、9条改正を正面から訴える勇気はない」ということなのだろう。

アメリカが「負ける」可能性

では、頼みのアメリカは確実に日本を守ってくれるのか。

今、アメリカ政界で「北朝鮮の核保有を受け入れるしかない」という意見が広がっている。トランプ氏が同調する気配はないが、最後に金正恩氏との根比べに負ける可能性はある。

その場合、アメリカが超大国を降り、中国がアジアの覇権国として君臨する。日本は常時、金正恩氏の「核の脅し」にさらされ、さらに巨大な核戦力の中国にも脅され続ける。

結局、 安倍首相の憲法改正案では、日本国民が北朝鮮や中国の「奴隷」になる未来を呼び込むことになる。

運命を自ら開く「自由」

自分たちの運命を自分たちの責任で開く「自由」を手にすることができなければ、日本の存続自体が危うい。

トランプ氏は、「自由は創造主からもたらされる」と語ったが、戦後の日本人が失った宗教心を今こそ取り戻す時だろう。

神の創造物であり、神の子である人間は、単に地上で生きればいい存在ではない。地上の人生を自分の力で切り開いた魂の経験によって、あの世で幸福な世界に還れるかどうかが決まる。

大川総裁が創設した宗教政党・幸福実現党は、すべての人にこの世でもあの世でも幸福になってもらうことを目指す。

そのために同党は09年の立党以来、今のトランプ政権以上の大減税、規制の大改革を訴えてきた。所得税・法人税は10%台を目指し、消費税は5%に戻す。

自由の領域を広げ、「稼いだお金を自分で使う権利」を取り戻すことで、「腐敗」した政治を「清潔」な政治へ転換できる。

憲法9条改正による防衛軍創設や、対北のミサイル保有と核装備も立党時から訴えてきた。

今求められるのは、日本としての正義を立て、自国でできることを国民に提示し、説得し、実行する「勇断」だ。

(綾織次郎)