2017年7月号記事
編集長コラム Monthly Column
“厄介な隣国”とのカルマを解消する方法
北朝鮮は5月に中距離ミサイルを発射し、アメリカに届く核ミサイルの完成に着々と近づいている。一方で、トランプ米大統領は「それを許さない」という決意を固めている。遠からず北朝鮮の「武装解除」、金正恩体制の終わりへと行動を起こすだろう。
問題は、 10~20年先を見据えて、朝鮮半島にどんな未来を開いていくか ということだ。そこに日本がどう関わっていけばいいかを考えておきたい。
大国に翻弄される地域
歴史を振り返ると、朝鮮半島は常に周辺の大国に翻弄され、侵略・支配を受ける場所だった。
そのため、シナ大陸の王朝に朝貢する冊封関係に入り、生き残りを図る「事大主義」が基本的な外交・防衛政策となった(元の高麗支配、明の李氏朝鮮支配など)。それにとどまらず、積極的にシナの王朝の軍隊を招き入れ、半島内の覇権争いや国内の内紛を解決することも習い性となっていった(新羅が唐と組み百済・高句麗を滅亡させた例など)。
加えて、シナ王朝に「侵略しても経済的にうま味のない国だ」と思わせるため、あえて極貧国にとどまり、魅力を消し込んできた。李氏朝鮮が特にそうで、以前の高麗時代にはあった荷車の車輪を作れなくなるまで技術が退化した。今では想像できないが、戦後の韓国は例外に入る。
外国依存と国造りの困難さ
つまり、 歴史的に朝鮮半島は、(1)外交・防衛を外国に依存しやすいことと、(2)経済面でも主体的な国造りが難しいことが"お国柄"となっている。
世界で似たような地域を探すと、ユダヤ民族が住んでいたパレスチナが近い。ユダヤ人は2世紀初めに国を滅ぼされ、2千年近く世界各地に散らばっていたが、戦後、イスラエルを建国。帰るべき土地を取り戻した。
朝鮮半島も、民族として生き残りが極めて難しい場所で、いつ国がなくなってもおかしくない。
変わらない"お国柄"
現代の朝鮮半島も、その"お国柄"はほとんど変わらないようだ。
(1)について言えば、1950年からの朝鮮戦争を戦ったのは米軍と中国軍が中心で、韓国の李承晩大統領はソウルから釜山まであっという間に逃げ出した。今の北朝鮮危機も、米軍頼みは変わらない。ただ、北朝鮮のほうは核ミサイルを持つことで、中国の「支配」から離脱しようとしている。
(2)については、李氏朝鮮の極貧状態は北朝鮮経済そのものだ。李朝では、王など支配階級だけが明や清、日本の対馬と交易していた。北朝鮮は金正恩氏直轄の貿易商社が海外から贅沢品を買い集めているので、まったく同じことをやっている。
李朝では私有財産が認められなかったので、これも北朝鮮とまったく変わらない。
文在寅氏が「冊封」を復活
では、このほどスタートした韓国の文在寅政権は、半島の歴史の中でどう位置づけられるだろうか。
文大統領は2012年の時点で、「低い段階の連邦制を実現させる」と語った。これは韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記(共に当時)が合意したものだが、まったく進展していなかった。
文氏が北の金正恩・労働党委員長と会い、「南北統一」に向けて話し合いを始める可能性は高い。
その際、両国が団結できるのが「反日」だ。文氏は著書で「自分が政権を取ったら、親日派を清算する。韓国の主流勢力を交代させる」と述べている。
これは、先の大戦後の米占領下で行われた公職追放に近いイメージだ。占領軍は日本の元軍人のほか、政界・官界・マスコミなどの戦争責任者や協力者計21万人以上を公職から排除した。韓国で同じような「主流勢力の交代」が親日派を襲おうとしている。
経済政策でも北朝鮮に"急接近"中だ。失業率の高い青年層の仕事を増やすため、民間企業に対し、法律で雇用を強制する。公共部門では81万人を新しく雇い、「大きな政府」を実現。そのために財閥系企業や富裕層には増税する。
まさに韓国経済の「魅力を消し込む」政策だ。
文氏はすでに「親北・従中」と言われている。中国の主張に沿って、韓国に配備されているTHAAD(高高度防衛ミサイル)の撤去に動けば、 かつての「冊封関係」が復活する。
「東洋のパレスチナ」に苦悩
李氏朝鮮が再びよみがえったかのような朝鮮半島に対して、日本はどう行動すればいいだろうか。
歴史的に日本は、「東洋のパレスチナ」である"厄介な隣国"に苦悩し、さまざまなカルマをつくってきた。
日本と半島との関係は、前出の「(1)外交・防衛の外国依存」でほとんどは説明できる。
(ア)663年の「白村江の戦い」で日本は、再興を目指す旧百済勢力を助け、唐・新羅軍と戦って敗れたが、この構図そのものが「外国依存」だった。
(イ)2度目の元寇(1281年、弘安の役)は、高麗王が元朝皇帝フビライに対する忠誠を証明し、政敵に勝つために、再度の日本攻めを提案し、実行したもの。日本は高麗の内紛に巻き込まれた。
(イ)元寇が起きた背景には、高麗王の政略があった(画像は1度目の文永の役を描いた『蒙古襲来絵詞』)。
(ウ)豊臣秀吉による朝鮮出兵(1592年と97年)は、日本軍と明軍との戦いが中心だった。李氏朝鮮は強い軍事力は持たず、国防を明に"外注"していた。
(ウ)日本軍は開戦からわずか21日で、首都を陥落させたほど、朝鮮軍は弱体化していた(画像は『蔚山籠城図屏風』)。
(エ)19世紀後半、西洋列強がアジア侵略を加速する中、日本はいち早く近代国家建設を果たして対抗。しかし、李氏朝鮮は清との冊封関係にこだわったり、ロシア支配を受け入れたりして近代化に踏み出せなかった。
日露戦争後、日本は韓国を保護国化したが、併合に反対していた伊藤博文・元初代統監の暗殺もあって日韓併合に至った。
これも「外国依存」の一つで、結果的に日韓両国にとって幸福なことではなかった。
(エ)韓国を統治する統監府に向かう伊藤博文(手前)。
例外的な戦後の韓国の繁栄
朝鮮半島のもう一つの特徴は「(2)経済的に主体的な国造りが難しい」だったが、これが当てはまらない、例外的な時代に日本との交流が活発となった。
例えば、古代の三国時代には百済に「任那日本府」という出張所があり、日本領の時代があった。その後、同じく百済から仏教が日本に伝えられた。当時、百済はシナ王朝の唐と対立しつつ、日本と結びついて高い文化を誇った。
先に述べたように、戦後の韓国も(2)の例外だ。
韓国は、アメリカの軍事力を頼みにする(1)の「外国依存」は変わらない。ただ、そのおかげでシナ大陸の大国の勢力圏を脱し、「主体的な国造り」が可能になった。
日本からの計5億ドルの経済支援を元手に、経済を急成長させる「漢江の奇跡」を実現した。
韓国はその民族の歴史の中で、最も繁栄し、最も幸福な時代を築いたと言える。
神仏の子としての公的幸福
であるならば、 朝鮮半島の未来は、「李氏朝鮮の復活」よりも、やはり、今の韓国をさらに発展させたものが望ましい。
韓国が北朝鮮と中国に呑みこまれるよりも、アメリカや日本との結びつきを強め、今の韓国の繁栄と幸福を北朝鮮の人たちにも広げていきたいものだ。
幸福の科学の大川隆法総裁は4月30日、幸福実現党全国大会での法話「立党8年目の真実」で、北朝鮮の未来の姿についてこう述べた。
「 北朝鮮の2千数百万の国民に政治的な自由、経済的な自由、それから思想・信条の自由、言論の自由を与え、『自由の創設』の下に彼らが政治に参加し、自分たちの納得できる政治をつくることが一つの目標にならなければならないと思います 」
これらの「自由」の根底には、「人間は神仏の子である」という人間観・信仰観がある。神仏の子であるからこそ人間は一人ひとりが大切にされ、幸福になる権利が尊重される。 「自由の創設」は、民主化ということではあるが、その目的は、神仏の子としての私的幸福の追求にとどまらない、国家レベルの公的幸福の創造にある。
日韓のカルマの克服
北朝鮮の人たちにもそれが可能となるために、日本はどう行動したらいいだろうか。
(1)日本として北朝鮮のミサイル攻撃を抑止する自衛体制をつくる。そのうえで日米韓に中露も巻き込んで北朝鮮に経済的・軍事的な圧力を加え、核・ミサイル開発を放棄させる。金正恩氏が亡命を選択できるよう国際環境を整える。「親北・従中」の文大統領が主導権を握らないよう、日米で説き伏せる。
(2)脱北者グループのリーダーを北朝鮮の国家再建の指導者として支援する。日韓併合前の金玉均ら開化派に対する日本からの支援がモデルだが、「外国依存」のカルマを乗り越えられるよう留意する。
(3)核を放棄した北朝鮮、あるいは将来の「統一朝鮮」に対して経済支援を行う。
(4)北朝鮮の民主化を中国の民主化につなげるため、日米を軸に香港、台湾、朝鮮半島などで思想的な包囲網を形成し、唯物論国家・中国を、宗教を大切にする国に変える。
これらを通じて、日本は"厄介な隣国"に対するカルマを解消できるだろう。
(綾織次郎)