精神科医

千田 要一

プロフィール

(ちだ・よういち)1972年、岩手県出身。医学博士。精神科医、心療内科医。医療法人千手会・ハッピースマイルクリニック理事長。九州大学大学院修了後、ロンドン大学研究員を経て現職。欧米の研究機関と共同研究を進め、臨床現場で多くの治癒実績を挙げる。アメリカ心身医学会学術賞、日本心身医学会池見賞など学会受賞多数。国内外での学術論文と著書は100編を超える。著書に『幸福感の強い人、弱い人』(幸福の科学出版)、『ポジティブ三世療法』(パレード)など多数。

幸福感の強い人弱い人

幸福感の強い人弱い人

千田要一著

幸福の科学出版

仕事や人間関係に疲れた時、気分転換になるのが映画です。

その映画を選ぶ際に、動員数、人気ランキング、コメンテーターが評価する「芸術性」など、様々な基準があります。

アメリカでは、精神医学の立場から見て「沈んだ心を浮かせる薬」になる映画を選ぶカルチャーがあります。一方、いくら「名作だ」と評価されていても、精神医学的に「心を沈ませる毒」になる映画も存在します。

(参照)

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12795

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12810

本連載では、国内外で数多くの治療実績・研究実績を誇る精神科医・千田要一氏に、悩みに応じて、心を浮かせる力を持つ名作映画を処方していただきます。

世の中に、人の心を豊かにする映画が増えることを祈って、お贈りします。

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「発達障害」のサクセスストーリーから学ぶ

今回は、「他の人が当たり前にできるのに、できないことがある。そんな自分が嫌になってくる」という人に、オススメの映画を処方いたします。

当院にも、「とろい」「のろま」「KY」などと周りから責められ、うつになって来られる方が少なくありません。

他の人ができることができない――。この状態の最たるものは、いわゆる「発達障害」と言われるものです。

例えば、「アスペルガー症候群」や「自閉症」の方は、対人関係において「間」を読むことや、表現が苦手で、暗黙の了解が分かりません。また、同時に複数の事柄を進めることができません。

また、「注意欠損・多動性障害(ADHD)」の方には、時間が守れない、物忘れや仕事のミスが多い、片づけが苦手、計画性に乏しい、といった特徴があります。

本人も、周りの方々も、こうした不得意な凹みの部分にばかり目を向け、悩みを大きくしてしまうことがよくあります。また、日本社会は「出るくいは打つ」ムラ社会なので、そういう子供たちがいじめの標的になってしまうこともあります。

程度の差はあれ、「自分は周りに比べて明らかに何か欠けている」と悩んでいる人は多いでしょう。

そんな人が、幸福感を取り戻し、成功する方法は、「自分の長所や潜在能力に目を向けて、自尊心を高める」ことです。

「グッド・ウィル・ハンティング」(★★★★☆)

まずご紹介したいのが、「グッド・ウィル・ハンティング」です。

アメリカの南ボストンに住む、ウィル・ハンティング(マット・デイモン)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で清掃員のバイトをしています。彼は、悪友たちとつるんで、たびたび警察沙汰の事件を起こし、社会不適応のレッテルを貼られています。孤児で里親を渡り歩き、虐待までされたトラウマのあまり、一種の発達障害(サヴァン症候群)のようになっていたのです。

しかし実は、彼は数学の天才でした。

ある日、ウィルは人目を盗んで、MITの掲示板に書かれた難解な数学の証明問題をこっそり解き、出題者のランボー教授(ステラン・スカルゲールド)を驚かせます。

ランボー教授は、彼の身元引受人になり、週2回、彼と共に研究室で勉強します。同時に、ウィルを更生させるため、様々な心理学者にセラピーを受けさせます。その中で、精神科医のショーン・マクガイア(ロビン・ウィリアムス)にだけは、徐々に心を開き始めます。

マクガイア医師の情が通ったカウンセリングを通して、ウィルは次第に社会性を取り戻し、たぐいまれなる数学の才能を発揮できる研究職に就けることに――。

「発達障害」などにより、際立って不得意な部分のある人は、逆に、得意なものも際立っていることが多いです。そのため、「発達障害」という名称に「障害」という言葉が使われているのは適当ではなく、「発達凸凹(でこぼこ)」と改称すべきだと言う専門家もいます。

実際に、エジソンや坂本竜馬は「注意欠損・多動性障害(ADHD)」であり、アインシュタイン博士などは「アスペルガー症候群」だと言われています。

「フォレスト・ガンプ 一期一会」(★★★★☆)

次にご紹介したいのが、「フォレスト・ガンプ 一期一会」。トム・ハンクス主演で、アカデミー賞6部門を受賞した名作です。

競争社会、成果主義のアメリカにおいて、劣った知能の持ち主が「純真な心」、「周囲の人々の協力」、「幸運」で成功を勝ち取る感動ストーリーです。

主人公のフォレストは、「知能指数(IQ)」が75です。これは、「平均レベル(>80)」と「精神発達遅滞(<70)」の間にある「境界域」に当たる知能になります。普通の小学校に入ろうにも、校長先生に一度断られたり、クラスでもいじめを受けたりします。

それでもフォレストは、「何事にもまっすぐに向き合う」ことに優れており、アメリカン・フットボールや、軍隊生活、卓球などにおいて、異常な才能を開花させ、驚くような成功を重ねていきます。

フォレストも、ある部分に大きな欠点を抱えながらも、心根において際立った長所を持っている例と言えます。

実際に、現代の心理学では、「情動指数(EQ)」という尺度が開発されています。これは、「IQ」とは異なり、「自分の感情をコントロールする能力」「相手の気持ちを察する能力」「チームを率いるリーダーシップ能力」などから成るもの。

そしてこの「EQ」の方が、「IQ」に比べて、3倍も成功に関わっているというのです。これは言い換えれば、道徳性・人間性であり、「教養」ではなく「修養」に当たる部分でしょう。

また、これらとは別に、お金を儲ける能力である「フィナンシャルIQ」やスピリチュアリティ指数である「SQ」というものも、存在しています。

フォレストの場合も、「IQ」は低かったのかもしれませんが、「EQ」や「フィナンシャルIQ」は高かったのでしょう。

他には、以下のような映画がオススメです。

  • サムサッカー(★★☆☆☆)……ADHD
  • レインマン(★★★☆☆)……サヴァン症候群(自閉症)
  • ザ・コンサルタント(★★★☆☆)……サヴァン症候群(アスペルガー症候群)
  • 娘の恋人(★★☆☆☆)……識字障害、自閉症
  • 脳男(★★☆☆☆)……サヴァン症候群(アスペルガー症候群)

発達障害による極端な欠点悩む人たちが、長所を見出して成功していく姿を描いた映画を見ることで、「自分の不器用な部分ばかりではなく、長所に目を向けよう」というメンタルを植え込むことができます。

【関連サイト】

ハッピースマイルクリニック公式サイト

http://hs-cl.com/

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【関連書籍】

幸福の科学出版 『幸福感の強い人弱い人 最新ポジティブ心理学の信念の科学』 千田要一著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=780

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