三井住友海上火災保険が、11月中にも国内で初めて仮想通貨を巡る盗難や消失に対応する保険を売り出すと発表した (24日付日本経済新聞)。
仮想通貨に対する保険が売り出されるのは日本では初めてのこと。ビットコインをはじめとする仮想通貨の取引は増加してきており、サイバー攻撃による盗難などへの保険が適用されることで消費者への安心感も増し、一層仮想通貨の普及が進むとみられている。またビットコインはここ数年で価格が高まっており、この1年では取引価格が1ビットコインあたり3万円台から8万円台へと倍以上となっている。
仮想通貨とはどのようなものなのか
ビットコインとは、限られたサービスの中で使える代表的な「仮想通貨」の一つで、インターネット上の暗号を専用ソフトで解読する「マイニング」という作業で手に入れることができる(関連記事1本目参照)。ネット上で「金を採掘する」イメージであり、実際のお札や硬貨ではなく、データとして存在する。
経済学で通貨とは、「人々が通貨だと思っているもの」と考える。では、「人々が通貨だ」と思うためには何が大きな要因になるのだろうか。
その一つに挙げられるのが、「通貨発行者への信用」である。例えば、円はなぜ通貨として使われるのかというと、それは発行者である日本銀行や、その背後にある日本経済への信用、もっと言えば日本人が働いて生み出す価値への信用があるからである。
だが現在、ビットコインを人々が通貨として認める信用の元は「ブロックチェーン」と呼ばれる、取引の連鎖記録を行うネットワーク技術にあると言われている。
簡単に説明すると、ビットコインの取引は時系列で記録されており、もしデータの改ざんがあった場合は、すぐにそれが取引台帳の変更という形で判明する仕組みだ。この「不正がすぐに判明するシステム」への信用がビットコインを仮想通貨として流通させる力となっており、発行者に対する信用に基づいているわけではない。
お金の原点とは
この仮想通貨に対してどのように考えていけばよいのだろうか。ここで原点に立ち返り、そもそも、「お金」とは何か、ということを考えたい。お金とは、各人がなした労働や、仕事の恩恵を受けた人からの「感謝」を具体化したものとも言える。この「感謝」が給料や代金として返ってきて、経済が循環する。
この観点でみると、ビットコイン等の仮想通貨は投機のために使われているという側面が強い。現状では、社会に対するプラスの貢献によって得られた「感謝の思い」という意味での、「お金」と同一視していいとは言えないだろう。
今後、様々な仮想通貨の流通量が増加していく流れは当面続いていくだろうが、何をもってその信用が保証され、かつ価値がもたらされているか、という面を注意して見ていく必要がありそうだ。(瑛)
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