仮想通貨「ビットコイン」が引き出せなくなり、波紋を呼んでいる。

ビットコインとは、インターネット上に存在する仮想通貨の一つ。ビットコインは、「日本円」における日銀のような発行者が明確でなく、「サトシ・ナカモト」という謎の人物が考案したシステムに基づいて、ネット上の暗号を解読することで手に入れるものだ。

しかし、暗号の解読は非常に難しく、世界中の人々が専用のハードウェアを使い、解読に取り組んでいる。金の採掘にちなんで、この解読作業は「採掘(マイニング)」と呼ばれる。もちろん、現金と交換することによって手に入れることもできる。

ゲームの賞金のようなビットコインだが、最近ではこの通貨を使えるオンラインショップや、レストランなどが増えつつある。流通量も増えており、世界全体で時価総額6000億~7000億円分にも及ぶ。銀行などのカードなどに比べて手続きが簡単で、低い手数料でネット通販の決済や、国際送金も可能という利便性が人気を呼び、現金をビットコインに換えて使う人が世界中で増えている。

こうしたビットコインの普及は、「貨幣とは何かを問いかける」として話題になった。仮想であっても、使う人々が互いにそれを「通貨」として信用すれば、実際に商品の売買に使えてしまう。「貨幣の本質は信用」であることを実感させるものであった。

しかし、そんなビットコインの先行きが非常に危ういものとなっている。コインの取引所であった「マウントゴックス」社が26日、すべての取引を停止すると発表したのだ。その背景は明らかになっていないが、サイバー攻撃で多額のビットコインが「盗まれた」という憶測が飛んでいる。

同社に預けられていた300億~400億円ものビットコインが利用できない状況となり、大混乱が起きている。円やドルで持っていた資産を、ビットコインに換えて持っていた人も多く、その利用者の資産が今後どうなるかは不明。戻って来ない可能性もあるというが、今回の騒動で明らかになったのは、通貨のもっとも大事な要素が「信用」にあるという点だ。

たとえば、円やドルなどの通貨であれば、金融危機でも起きない限り、突然、使えなくなるということはない。仮にそうなったとしても、政府や金融機関は、自らの信用を取り戻す意味も含めて、何かしらの救済を行うべく動く。最終的には、半永久的に存在する国家が、その価値を保証している。

また、これまで本誌が提言してきたように、「銀行紙幣」「貨幣の自由発行」を実現させるとしても、大きな信用力があるメガバンクが発行の主体となることが予想される。つまり、信用の裏付けのないものは、通貨としては成り立ちにくいということだ。

通貨の可能性を垣間見せてくれたビットコインだが、まさにその「信用」のなさが弱点であることを教えてくれたと言える。(光)

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2009年4月号記事 30兆円の銀行紙幣を発行せよ

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