HSU祭で行われた黄文雄氏の講演。多くの参加者が熱心に聞き入った。

黄 文雄

プロフィール

(こうぶんゆう)1938年台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院西洋経済史修士課程修了。1966年より雑誌編集などを経て執筆活動に入る。著書は『捏造された昭和史』『韓国は日本人がつくった』『中華帝国の興亡』『なぜ中国人・韓国人は「反日」を叫ぶのか』『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』『蔡英文が台湾を変える』など多数。

「現代の松下村塾」として、新たな未来の創造を目指す、千葉県長生村にある本格私学「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)」で、10月下旬、学園祭「HSU祭」が開かれた。

ディベート大会や研究発表、舞台劇やダンス発表など、さまざまな催しが行われ、地域の人々や高校・大学生など、数多くの来場者が詰めかけた。

特に盛況だったのが、評論家の黄文雄氏の特別講演会「中国人・韓国人・日本人 国民性の違い なぜこんなに違うのか」。会場を埋めた参加者は、熱心に耳を傾けた。

本欄では、2回にわたってその講演の要約を紹介する。今回はその後編。

黄文雄: 中国人と韓国人と日本人の違いについてですが、日本人は神代からずっと「純粋と誠」ですね。純粋と誠は、道徳観と言いますか、日本人の国民性として長く定着しています。

一方、中国と韓国の特徴は、専門家の中でも諸説ございますが、嘘つきとほら吹きと裏切りという、この3つだけ覚えれば、大体間違いはありません(笑)。そこが日本人との違いです。

日本人の国民性と性格については、皆さんよくご存知だと思いますので、指摘はしません。中国についての著書で、私が推薦したいのは、19世紀のアメリカ人宣教師で、中国で30年以上布教活動を行ったアーサー・スミスの『支那人の性格』です。

原文は英語ですが、日本語にも中国語にも翻訳されています。非常に細かい分析がなされています。この中に、中国人で良心を持つ方を探したが、一人も発見できなかったと書いてあり、ショックでした。加えて、20世紀の中国の政治家で、ジャーナリストの梁啓超(りょう・けいちょう)の著書もお勧めです。この方は、かなり有名な方です。

また、韓国についてのお勧めの著書は、韓国の近代文学の祖と言われる李光洙のものです。朴槿恵大統領の父、朴正煕元大統領の著書を読んでも、韓国の国民性がよく分かります。

日本には伝統的に宗教的素養があった

講演する黄氏。

明治時代の教育者・新渡戸稲造は、「学校で宗教教育がないのに、日本ではどのようにして道徳を教えるのか」と尋ねられ、答えられませんでした。それから約10年後にようやく、『武士道』を書きました。私は、『武士道』を読んで、武士道は宗教を超えていると気が付きました。

武士道がなぜ宗教を超えているかというと、死を考えるだけでなくて、死を一つの実践として、考えているためです。どの宗教も、「生とは何か」「死とは何か」を問いかけます。特に仏教には、死後の世界や天国・地獄などが出てきます。私も宗教に興味を持って、「宗教とは何ぞや」と50年以上、考えてきました。

なぜ、中国人に道徳心がないかというと、結局、宗教という受け皿がない限りは、道徳は育たないからだと思います。道徳心がなくなると、結局、偽善者になってしまいます。

日本と中国の違いで一番強調したいのは、大和魂と中華思想です。大和魂の一番の特徴は、思いやりです。ただ、私の住んでいる茨城県でも、道徳教育が消えつつあるそうです。多様性を求めるならば、独自の道徳を押し付けない方がよいという人もいます。

ですが、日本は、仏教思想の中に、善と悪を超えるような文化を元々持っていました。武士道もその一つです。宗教心を養うという意味で、伝統文化の復活も大切だと思います。

一方、中国と韓国は中華思想を持っています。中華思想の特徴の1つは、自己中です。物事に関して自己中心的ですから、自信過剰になります。そしてもう1つが、優越主義が強すぎることです。

日本人と中国人の違い、地政学と生態学から探ってみると、実は分かりやすいです。中国は大陸ですが、日本は島。文化に関しては同じところもありますが、文明の仕組みや社会の仕組みは違います。そこから生まれた精神性も異なるものになります。

島国の民族は、物の隙間を通して物を見ることが多いです。英語でいうとlook throughですね。海洋民族や砂漠の民族は、どちらかというと、周りを見まわすことが多いので、英語でいえばlook around。物の見方が違えば、考え方や心のあり方も違ってきます。

また、日本人はあまり感じませんが、漢字は目で見るしかない表意文字で、視覚的です。日本が開発したかな文字は、表音文字です。漢字かな混じり文字を開発したことは、私は日本史の中で最大の発明だと思います。日本は、視覚と聴覚の両方を使う文明なんです。(了)

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