複数の米メディアがトランプ氏優勢という世論調査を報じている。

米ワシントンポスト紙とABCニュースは、大統領選に関する世論調査を、合同で定期的に行ってきた。5月より同調査が開始されて以来、クリントン氏の支持率が常に優勢だったが、10月30日に行われた調査では、トランプ氏46%、クリントン氏45%という結果で、トランプ氏の支持率がクリントン氏を1ポイント上回った。

また、同調査における「どちらの候補者がより正直で信頼できるか」という質問でも、46%の人がトランプ氏と答え、クリントン氏と答えた38%を初めてリードした。

米ロサンゼルス・タイムズ紙も独自の世論調査の結果を報じている。11月3日の調査結果は、トランプ氏支持が47.5%、クリントン支持が42.5%と、トランプ氏の支持率が5ポイントクリントン氏をリードした。

米ワシントンポスト紙は、今回の結果について、「今までトランプ支持を決めかねていた共和党支持者が、トランプ氏が支持できる候補者であると判断しつつあることによる」と分析した(10月30日付)。

数々の"暴言"でバッシングを受けてきたトランプ氏だが、本音で話す姿勢が、投票日が近づくにつれて「信頼できる」と評価されてきたようだ。

支持率逆転の背景にあるFBI捜査

クリントン優勢の戦局が変化した背景には、10月28日に米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メール問題の捜査を再開すると発表したことがあるだろう。

このメール問題は2015年3月、クリントン氏が、次期大統領選の民主党最有力候補と言われていた時に発覚した。クリントン氏が、国務長官時代に公務で使用していたメールアドレスが、アメリカ国務省のものではなく、個人用のものであったことを、野党共和党から批判された。

FBIは、クリントン氏の3万通に上る私用メールに関して「違法性はない」とし、2016年7月に捜査の終結を宣言していた。しかし、10月上旬、FBIが、アンソニー・ウィーナー元民主党下院議員のノートパソコンを、未成年の女性にわいせつなメッセージを送信していた疑いで押収・捜査したことにより、事態は変化する。

ノートパソコンのデータを調べたところ、クリントン氏の私用メール問題との関連性が浮上してきた。これにより、FBI長官であるコミー氏はクリントン氏の私用メール問題の捜査を進める旨を公式発表。大統領選の投票日直前に発表を行うことに対し、「選挙に影響を与えかねない違反行為」という批判の声もあがっている。

しかし、コミー氏は、たとえ大統領選に大きな影響を与えることになっても、重大な問題を含んでいる可能性がある事実を隠ぺいしてしまうことは、FBIの「中立性」にかかわるとして、今回の発表に踏み切った。

国家安全保障に関わる私用メール問題

公務に個人のメールアドレスを使用したことが明らかになった2015年3月ごろ、クリントン氏は「(1つのメールアドレスで公用と私用どちらにも対応できるのが)便利だから、つい使っていた」などと釈明した。

しかし、国務長官の公務内容は、直接、国家の安全保障に関わるものだ。利便性を求めたというような理由が許容されるはずはない。

実際、クリントン氏の私用メール問題に関しては、本来、逮捕されてしかるべき案件であるとの指摘も以前からなされてきた。

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領から機密書類を受け取ったとして、崔順実(チェ・スンシル)氏が緊急逮捕されたことが世間をにぎわせているが、国家機密はそれほど重いということだ。FBIの再捜査への決断は妥当なものだ。

いよいよ投開票日を来週に迎えるアメリカ大統領選。「オクトーバーサプライズ(October Surprise)」と言われる今回の捜査が大統領選をどのように左右するか、目が離せない。(片)

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