夏の参院選後初めての国政選挙となった、東京10区、福岡6区の衆院補欠選挙が、23日投開票された。東京10区は自民党の衆院議員だった若狭勝氏が、福岡6区は鳩山邦夫元総務相の次男で前大川市長の鳩山二郎氏が、それぞれ当選を果たした。

今回の補選は、民進党の新代表に就任した蓮舫氏の「初陣」であり、推薦は受けなかったものの事実上の野党統一候補がどこまで支持を広げるかにも注目が集まったが、両選挙区とも民進党候補は大差で敗れた。

大手紙朝刊には、「自民勝利」の文字が躍り、自民党の二階俊博幹事長も、「自民党に対する期待の表れだ」と語った。

政局優先で自民党分裂

だが、今回の補選は自民党の勝利と言えるのだろうか。

東京10区で当選した若狭氏は、7月に行われた東京都知事選で、自民党の方針に反して小池百合子氏を支援した。小池氏が当選したことで若狭氏の処分は「厳重注意」に留まり、それどころか10区の公認を得て、選挙区からの出馬で当選を果たした。

これは自民党への支持というより、小池都知事への支持による勝利と見るべきだろう。

一方、福岡6区は事実上の「自民党分裂選挙」となった。福岡6区では、当初、蔵内勇夫・自民党福岡県連会長の長男であり、林芳正参院議員の秘書を務めていた蔵内謙氏を自民党公認候補として出馬させる方向で調整を進めていた。

だが、鳩山邦夫氏が亡くなったことに伴う補欠選挙だったため、次男の鳩山二郎氏が出馬を表明。自民党本部は、鳩山氏有利と見て、「当選した側を追加公認する」という形で公認の決断を避けた。

結果として鳩山氏が当選し、自民党は鳩山氏に追加公認を出した。

こうした経緯を見れば、有権者は"弔い合戦"を応援したのであり、必ずしも自民党を支持したわけではあるまい。

両選挙区とも、自民党の勝利ではなく、分裂が明らかになったと言えるだろう。

過去最低の投票率が示すもの

こうした政局優先の選挙を繰り返すうちに、有権者の心は政治から離れつつある。

今回の補選の投票率は、東京10区が34.85%、福岡6区が45.46%で、共に過去最低。

ここ数年の投票率を見ても、「政権交代選挙」とマスコミがあおった、2009年衆院選の69.28%が最高で、その後は減少傾向にある。2014年末に行われた衆院総選挙では過去最低の52.66%まで落ち込んだが、今回の補選はそれを大幅に下回った。

過去最低の投票率で勝利したところで、「自民党への期待の表れ」とは言いがたい。

だが、安倍政権の支持率はそれほど落ちてはいない。

大半の有権者は、うまくいっているかどうかは別として、安倍政権の国防強化、経済成長路線については支持しているのだろう。だが、自民党の古い政治には期待できないという国民の声なき声が、無党派層の広がりといった形で現れている。

政策による「新しい選択」を

「自民党は嫌だ、でも民進党は論外」という有権者に、「新しい選択」を示したのが、今回の補選でも両選挙区に出馬した幸福実現党の候補者だった。

幸福実現党は、安倍政権が進めようとしている政策を「先出し」し、かつブレることなく訴えてきた。

相変わらずマスコミ報道は、幸福実現党の打ち出す政策についてはわずかしか報じない。

今回の東京10区補選においても、BSフジは公開討論番組に若狭氏と民進党の鈴木庸介氏のみを招き、幸福実現党の吉井利光氏を参加させなかった。

政局ではなく政策で政治家を選ぶためには、マスコミが正しい情報を伝えるという使命を果たさなくてはいけない。国民が完全に政治に失望する前に、「新しい選択」を広く示す必要がある。

(小川佳世子)

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