2016年11月号記事

安倍政権の次を読む

「支持率ノミクス」3本の矢

安倍政権の本質は、 外交・経済における哲学より、支持率を見たほうが、シンプルに理解しやすいかもしれない。

(編集部 馬場光太郎)

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「他に適当な人がいない」

世論調査で、安倍政権を支持する理由のトップにくるのが、この項目だ(注1)。

「これといった理由はないが、何となく任せられる」。そんな安倍晋三首相だが、とうとう自民党総裁の任期延長論まで出始めた。この「何となく人気」はどのようにつくられてきたのか。

上グラフの支持率を辿りながら、その時々の施策を振り返ると、一つのパターンが見えてくる。

増税による景気の悪化や、秘密保護法案、安保法案に対するバッシングで支持率がガタっと落ちる。その後、反対論を消し込む様々な施策を打つことで、支持率を回復させる。

増税先送り、米議会での演説、新・三本の矢の発表、安倍談話や日韓合意―。安倍政権の記憶に残る多くの政策が、このパターンの中にあてはまる。

安倍政権は絶妙なタイミングで、親安倍派も反安倍派も賛同したくなる政策を繰り出し、支持率を保ってきた。 それは、経済成長率ならぬ、支持率のみを計算する"経済"政策、「支持率ノミクス」とでも言えるほどだ。

だが、高い支持率の割に実体経済は良くない。

消費支出(実質)は政権発足時に比べ、下がっている(37ページグラフ)。全国的にスーパーや百貨店の閉店ラッシュも始まっている。百貨店に限っても、来年夏までに全国で三越千葉店をはじめとする10店舗が閉まるとも言われている。

大規模な金融緩和・財政出動を行ったにもかかわらず、実質GDPも、増税後の2年半で、ほとんど増えていない。

こうして見ると、「支持率ノミクス」はアベノミクスをはるかにしのぐ"成果"を出している。

安倍政権は、どのように支持率を維持しているのか。そのテクニックを「三本の矢」に見立てて分析してみたい。

(注1)時事通信による安倍内閣の支持率に関する世論調査。 2016年9月実施など。

次ページからのポイント

第一の矢 世界の評価を逆輸入 安倍マリオ効果

第二の矢 争点を眩ます催眠術 振り子論法

第三の矢 笑顔の裏で政敵を崩す