日本政府が主導するアフリカ開発会議(TICAD)が27日から2日間、ケニアで開催される。

TICADは1993年以降、日本政府が国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)、世界銀行などと共同で開催している、アフリカの支援について話し合う国際会議だ。今回のTICADは初のアフリカ開催となる。外務省によると、日本によるアフリカへの支援は、「質の高い成長」と「アフリカの一人ひとりの能力強化」が特徴だ。

世界から熱い視線を集めるアフリカ大陸

アフリカは、人口が増え続けていることや、豊富な天然資源が産出されることなどから、「最後のフロンティア」として世界から注目を集めている。

しかし、アフリカ諸国は経済の基盤を資源の輸出に頼っているために、資源価格が下落すると、たちまち大打撃を受けてしまう。また、資源が産出されても産業として発展させる力がないため、なかなか貧困から抜け出せないという課題を抱えている。

たとえばナイジェリアは、アフリカ最大の原油輸出国だが、原油を自国で精製するインフラを十分に持っていない。そのため、ガソリンなど原油を精製して作る製品はほぼすべて輸入している。日本から技術の輸出や産業の育成ができれば、アフリカはもっと豊かになるだろう。

中国の援助はアフリカのためならず

日本がアフリカに援助するうえで無視できないのが、中国の存在だ。

中国は、圧倒的な資金とスピードで、一足先に石油・鉱物資源などの開発事業に進出してきた。外務省によると2000年からの15年間で、中国とアフリカとの貿易は22倍に拡大した。

中国は、資源獲得が狙いであることを隠そうともせず、「援助」という名目で「植民地化」ともいえる行動を続けている。

例えば、中国企業はアフリカ進出に合わせて、大量の低賃金労働者を中国からアフリカに連れてくるため、現地の雇用は育たない。また、現地のアフリカ人に対して高圧的な態度を取る中国人ビジネスマンの姿勢に、多くのアフリカ人が不満を持っているという声も数多く聞こえてくる。さらに、中国の個人事業家がアフリカに持ち込む、安かろう悪かろうの中国製品によって、アフリカの地場産業を潰しているという現状もある。

こうした中国のアフリカ進出は、国際的に批判を浴びている。2011年当時、米国務長官を務めていたヒラリー・クリントン氏がザンビアに訪問した際、「アフリカは中国の『新植民地主義』に注意すべきだ」と警告していた。

中国の自己中心的ともいえるアフリカ進出は、アフリカ人の目の前の生活を便利にすることに一役買っている面はあっても、長い目で見ると、アフリカ人一人ひとりの幸福や、国の繁栄には結びつかないだろう。

日本は商道徳をこそ輸出すべき

今回の会議に臨むにあたり、安倍晋三首相は「質の高い技術と人材育成という日本の強みを生かしてアフリカの発展に貢献し、ウィンウィンの関係を築いていきたい」と述べている。

日本の強みである「信頼関係づくり」や「勤勉さ」、「品質や技術力の高さ」などをアフリカにも広げ、時間はかかっても辛抱強く現地の人材を育てていくことで、将来的にはアフリカ人が自立できるよう支援することが王道だ。

加えて、日本には、伝統的に商売の信条として「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の精神が受け継がれている。日本はこうした「商道徳」をこそ、アフリカに輸出すべきではないだろうか。これが、中国的な支援との最大の差別化にもなるだろう。

(小林真由美)

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