反政府デモが続くエジプトで28日、過去最大規模のデモが起きたことを受け、29日、ムバラク大統領は内閣総辞職と新内閣組閣を発表すると共に、民主化や貧困解消などの改革に取り組むとした。しかし辞任は否定し、デモを批判するなど強気の姿勢を崩していない。親米政権として実績のある同政権では、チュニジアのような政変に至るにはまだ距離があるかもしれない。

28日のイスラム教礼拝後、若者中心の民主化グループ「4月6日運動」が主導し、全土で数十万人の大規模なデモが起き、各地でデモ隊と治安部隊が衝突し、多数の死傷者が出た。ムバラク政権は数都市で夜間外出禁止令を発し、軍部隊を投入すると共に、デモ勢力の情報網であるインターネットや携帯電話の通信を止めるなど、鎮圧に躍起になった。

デモには最大野党のムスリム同胞団や、次期大統領選出馬を目指す国際原子力機関(IAEA)前事務局長のエルバラダイ氏も加わり、政権打倒に向け一定の政治勢力を形成し始めたかにも見える。しかし国外滞在が長いエルバラダイ氏への支持はそれほど集まっておらず、野党も弾圧で弱体化されており、反政府勢力にはリーダー不在との見方も強い。

何より最大の「民主化の味方」であるはずの米国は、ムバラク政権に改革を求めつつも、あくまでイスラム過激派への強硬姿勢やイスラエルとの和平で米国と歩調を合わせてきた同政権を支持する姿勢を保っている。大国エジプトで親米政権が崩壊することで中東全域に影響が及び、イスラム勢力が台頭することを恐れているのだろう。米国の支持を取り付けた独裁政権の民主化には、まだ時間がかかりそうだ。(由)

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