2016年4月号記事

アメリカ大統領選

トランプの正体

この暴言王は日本の友人か?


contents


3 トランプ研究

成金か? 人格者か?

ドナルド・トランプ物語

若いブロンド美女をつれて歩くトランプ氏は、いかにも「成金」に見える。実際はどんな人物なのか。著書や支持者の声から探る。

(編集部 山本泉)

ドナルド・トランプ氏と娘・イヴァンカ氏。トランプ氏は不動産開発やホテル、カジノ経営などで大成功。巨万の富を築いた。

トランプ氏の子供の頃の写真。父・母・兄姉らと。右から2番目が小さな頃のトランプ氏。

父・母と。一番右が学生の頃のトランプ氏。

トランプ・タワー。トランプ氏も、トランプ・タワーを見ると美しさのあまり、「クラクラする」らしい。

ドナルド・トランプが産声をあげたのは、1946年、ニューヨーク。父フレッドと母メアリの間の5人兄弟の次男として生まれた。父は低・中所得者向けの不動産開発会社の社長で、よちよち歩きの頃から父に連れられて建築現場に出入りした。

性格は典型的なガキ大将。リーダーとして慕われるか、とても嫌われるかのどちらかだった。13歳で父に軍隊式の学校に入れられ、「攻撃性を建設的に使えるようになった」という。在学中も帰省するたびに父と現場を回り、商売の仕方を学んだ。トランプの原点はこの堅物の父の教えだ。

「人生で一番大切なのは、自分の仕事に愛着を持つことだ。何かに熟達するにはそれしかないんだから」

ペンシルベニア大学大学院ウォートン・スクールでMBAを取得し、卒業後は父の会社に入社する。しかしすぐに、父が手掛ける低・中所得者向けの不動産に物足りなさを感じるようになった。

取引の天才

目指したのは、富裕層の街・マンハッタン。25歳の時、アパートを借りて移住する。当時は金も部下もなかったが、あたかも大組織のトップであるかのように振る舞った。

父譲りで酒もたばこもやらない。「早く仕事に行きたい、と思うと眠気が吹っ飛んでしまう」ほどの仕事好きで、「私にとっては取引が芸術だ」とまで言う。「率直に考えを述べる」「求めるものを手に入れるまで、押して押して押しまくる」「つねに最悪を予想する」などの仕事哲学で、多くの取引を成功させた。

マンハッタンで最初に成功させたのは、湾岸地区の再開発。1970年に鉄道会社が破産し、資産に沿岸地区の一部が含まれていた。トランプはこの一帯に高級住宅ビルをつくる計画を熱心に売り込み、格安の値段で土地を買う契約に成功する。

しかし、地元の反対や不動産不況が襲い、結局、着工したのは1996年。計画を売り込んでから、20年以上が経っていた。この地区はトランプ・プレイスと名づけられ、今では壮大な景観を誇る名所となっている。

トランプが建てた建物の中で、最も有名なのがトランプ・タワーだろう。

「マンハッタンの最高の土地に最高の建物を建てたい」

そこで目を付けたのは、高級ブランド店が立ち並ぶ5番街の角地。1975年に交渉を開始して、3年経ってようやく買い付けに成功する。周りの土地に高層ビルが建たないよう、隣のビルの空中権などを取得することも忘れなかった。壮大さと美しさを重視した58階建てのこのビルは、多くのセレブが住むことでも知られている。

こうしてトランプは、不動産王として名声を確立していった。

次ページからのポイント

稀代のボケナスに転落

「お前はクビだ!」で人気者に

「トランプは繁栄と正義を象徴している」 鈴木真実哉氏