今年11月のアメリカ大統領選挙の開幕戦であるアイオワ党員集会が1日夜(日本時間2日午前)、州内各地で開催された。

与党の民主党は、本命候補のヒラリー・クリントン前国務長官が、知名度と経験を武器に女性初の大統領を目指して独走していたが、2015年秋から「民主社会主義者」を名乗り、格差の是正を掲げるバーニー・サンダース上院議員が猛追。米主要メディアによると、アイオワ州では接戦の結果、民主党の両候補は「引き分け」となった。8年ぶりの政権奪還を目指す野党の共和党は、アイオワ州に資金と組織を集中させて戦った保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員が、不動産王のドナルド・トランプ氏とマルコ・ルビオ上院議員を破って勝利した。

アメリカで台頭する「社会主義」

今回のアイオワ戦で注目すべきは、「社会主義者」を自称する民主党・サンダース氏が、同党の本命候補クリントン氏と引き分けになるほど台頭したことだ。

サンダース氏の政治革命に熱狂するのは、比較的若い世代だ。彼らは、2011年に「上位1パーセントの富裕層が資産を独占している」と抗議してウォール街を占拠した勢力と共通する。「富裕層に課税することで格差を是正できる」と主張したフランスの経済学者トマ・ピケティの書籍『21世紀の資本』がアメリカで大ヒットしたことも、こうした風潮を後押ししている。

しかし、アメリカという国は、自助努力で成功し繁栄した人を賞賛するカルチャーのもとで発展してきた。一生懸命働いて豊かになった人は英雄であり、嫉妬の対象ではなかった。豊かな人の富を貧しい人に再配分するような社会主義的な政策は、努力するモチベーションを奪い、結果的に国を衰退させていく考え方と言えるのではないか。

「トランプ旋風」は既存の政治体制への不満の現れ

さらに注目したいのは、「イスラム教徒の入国禁止」「アメリカとメキシコの間に壁をつくる」などの型破りな発言を繰り返す共和党のトランプ氏が、アイオワ州に強い支持基盤を持つクルーズ氏を脅かすほど健闘したことだ。誰もが"ジョーク"だと思っていたトランプ氏が、今や"シリアス"な大統領候補として浮上してきた背景には、多くのアメリカ国民が既存の政治体制へ強い不満を持っているという現実がある。

CNNの世論調査によると、アイオワ州に続く第2戦の舞台となるニューハンプシャー州では、民主党はサンダース氏、共和党はトランプ氏が圧倒的な優位に立っている。同州では2月9日に両党の予備選が実施されるが、サンダース氏やトランプ氏は、アメリカの政治の流れを大きく変える存在になり得るのだろうか。世界の命運をも左右するアメリカ大統領選から、今後も目が離せない。(真)

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