2016年3月号記事
The Liberty Opinion 1
国際
サウジアラビアとイランが国交断絶
イスラム教宗派の違いは乗り越えられる
年明け早々、イスラム教スンニ派のサウジアラビア(以下、サウジ)が、イスラム教シーア派のイランと国交を断絶した 。
事の発端は、サウジ政府が、シーア派の宗教的指導者ニムル・アル=ニムル師を処刑したこと。これに怒ったイラン国民が、イランのサウジ大使館を襲撃。その後、サウジはイランと外交関係を断絶した。
中東で最大規模の経済力を持つ両国は、スンニ派とシーア派の代表国であり、長年お互いをライバル視してきた。 この両国が敵対関係になって、「大きな戦争が起こるのではないか」と、国際社会が懸念している 。
対立の背景には、2003年に始まったアメリカ主導のイラク戦争がある。スンニ派のサダム・フセイン政権が倒れた後のイラクでは、イランを後ろ盾に持つシーア派政権が誕生した。中東でイラン率いるシーア派の影響力がこれ以上増すことを、サウジは警戒してきた。
しかし、それまでサウジと良好な関係を築いてきたアメリカが15年4月にイランと核合意を交わした。イランが10年間核開発を停止することと引き換えに、欧米はイランに対する経済制裁を終わらせる。
だが、10年経てば、イランは核開発を再開できる。サウジは、「いずれイランが核兵器を持つ」ことを警戒する。アメリカがイランを放置すれば、サウジも核開発に乗り出すかもしれない。