米グーグル社と米航空宇宙局(NASA)がこのほど、量子コンピューター「D-Wave2X」の作成に成功したという。

量子コンピューターとは、既存のパソコンと違う計算方法を使って計算速度を速めるため、「未来のコンピューター」として期待されてきた。

研究チームが行ったテストで、この量子コンピューターは、既存のパソコンの1億倍の速さ、世界最速と言われてきたスパコンの3600倍という計算速度を叩き出した。

量子コンピューターから量子人工知能へ

グーグルが行ったテストは、人工知能の研究の中に位置づけられる「最適化」と呼ばれるものだ。そのため、この研究はNASAのエイムズ研究センターで、「量子人工知能(量子AI)」という名前で行われている。

この人工知能は、一体どのように「考える」のだろうか。

人工知能の研究では、「思考」を「検索」に置き換えることができる。この場合の「検索」とは、「質問や仮定」から「答えや結論」を導き出すための「道」を「探す」ことだ。膨大に存在する「道」や「間違った答え」から、効率良く「道」を導き出すのが「最適化」だ。

たとえば、宅配便の配達ルート、飛行機の誘導、または、宇宙飛行の航行ルートなど、目的地までの「道」を探すことに人工知能は有用だ。

同じメカニズムで、他国の暗号を解読したり、製薬会社が新しい薬品を発明したりすることも容易になる。

そうした仕事の中で、量子AIは、既存のパソコンとは比べ物にならないほどの速さで正しい「道」を見つけ出すことができるのだ。

まだ幼少期の量子AI

今のところ、量子コンピューターはその性質上、特殊な計算や研究以外の役には立たない。D-Wave2Xは、全長3メートル以上の巨大装置で、絶対零度に近い温度まで冷却しなければならない。まだ一般家庭で使用できるようなものではない。

しかし、現在家庭で使用されているパソコンも、20世紀の半ばまで一部屋くらいの大きな装置だった。当時のコンピューターも特殊な計算・研究に使用され、ネットで買い物をしたり、ニュースを見るなどといったことに使われていたわけではない。それが、70年代には机の上に乗る規模になってしまった。

数十年後、いま我々が使っているパソコンが無用のものとなり、量子コンピューターが各家庭にあってもおかしくはない。

人工知能が一般大衆に普及したとき、人々の生活は、SFで見るような未来社会的なものになっているのだろうか。その答えは、すぐそこまで来ているのかもしれない。(中)

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