オーシャン・スパイラル構想についてプレゼンする竹内氏。
2016年2月号記事
清水建設 海洋未来都市プロジェクト・リーダー
竹内真幸
(たけうち・まさき)1957年、東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、清水建設に入社。大規模プロジェクト事業コンペなどを経て、現在は海洋未来都市プロジェクト・プロジェクトリーダーを務める。
未来産業のたまご
第2回
海の中に都市を創る
─改革型のアイデアが日本の産業を変える
建設大手の清水建設は、「海の中の都市」を創るプロジェクトを進めている。
リーダーの竹内真幸氏に話を聞いた。
203×年。ある会社員が異動の辞令を受け取った。行き先は「太平洋の深海の事務所」─。 こんな光景が、清水建設の進める「オーシャン・スパイラル構想」によって現実化するかもしれない。
深海とつながる都市
清水建設が打ち出したこの海中都市構想では、海面下に直径500メートルの球体の都市を創る。ホテルやオフィス、住居が集まり、5000人を収容することが可能だ。
都市から海底に向けて3000~4000メートルまでは、らせん状のスロープを伸ばす。海底と海面の間で大量の深層水、資源、水、電気、情報などを運ぶことができ、人間はスロープに沿ってゴンドラで移動する。この球状の都市は海に浮いている状態で、海底から引っ張っているために上下の動きが生じるが、ばねのようならせん構造がその動きを吸収する(右図)。
「海中に都市ができる」だけではない。 人類が直面する水やエネルギー、食糧問題の解決も目指している 。「社外の研究機関とコラボレーションして、海水の温度差で発電をしたり、海水の水圧差で淡水化するシステムの大規模化をします。大気中のCO2を海中でメタンガスに変える国の研究機関の成果なども取り込む予定です」と海洋未来都市プロジェクト・リーダーの竹内真幸氏は語る。
特に注目したいのが、海底につくる「資源工場」だ 。現在、世界各国が海底からレアメタルなどの鉱物を採掘する計画を進めている。これらの鉱物は、海底から噴出する熱水に含まれる重金属が冷え固まったものだ。この熱水噴出孔を人工的につくり、鉱物資源を採掘するというJAMSTEC(注)の研究も、産業化された暁にはプロジェクトに取り込む。
2030年ごろの実現を目指しており、水・食糧・エネルギーに加えて資源工場にもなるスゴイ計画だ。しかし、「技術的に一部はすでにできています」と竹内氏は言う。
「発電や淡水化の技術は装置を大規模にすれば実現可能です。CO2のメタン化や鉱物資源を育てる技術などの産業化はやや遠い将来になりそうですが、ブレークスルーが起きて急にできたりするかもしれない」と、実現への確信をのぞかせる。