宗教学者の山折哲雄氏が1月17日付読売新聞に「国家と宗教 パクス・ヤポニカ(日本の平和)の奇跡」という論考を書いている。要約をすると

・    日本を1000年ほどさかのぼったとき二つの特質がある。第一の特質は、長期にわたり平和の状態が続いた時期が2度もあった。平安時代の350年(桓武天皇の平安遷都から保元・平治の戦乱まで)と、江戸時代の250年。

・    ヨーロッパ、中国、インドでも発見できない歴史上の奇跡と言っていい。

・    第二の特質は、1000年以上にわたって異民族による征服や支配をまったく経験することがなかった。

・    「パクス・ヤポニカ」を可能にしたのは、国家と宗教が調和の関係を取り結んだことが最もベーシックな要因ではないか。その関係が敗れるとき、戦争と動乱の時代に入る(鎌倉時代から南北朝、戦国時代)。

・    国家と宗教の調和のとれた関係とは。第一が神仏共存の多神教的なシステム。外来の仏教と土着の神道との平和共存のシステム。世界の歴史でも極めて希。

・    第二が象徴天皇制の独自統治システム。平安時代の摂関政治の中で形づくられてきた。ひと言で言えば、政治的権力と宗教的権威が互いに他の領域を侵さない、相互補完的な統治システム。

・    「パクス・ヤポニカ」の精神基軸である神仏共存のシステムと象徴天皇制の統治システムを世界に向けて発信していく段階にきている。

国家と宗教の関係にこそ、国家と世界の平和と繁栄のカギがある。仏教と神道の関係(神仏習合)が、キリスト教で言うような「千年王国」を実現してきた。

奈良時代に聖徳太子が仏教を伝統的な神道と融合しながら取り入れたとき、仏教は当時の最先端の先進宗教であり学問であった。現代も先進宗教を受け入れる時代なのかもしれない。

また、平安の摂関政治以降の象徴天皇制は、明治以降の天皇制と異なるという議論がある。現代の天皇制は政治に近すぎるという見方だ。その意味で、これからの「千年王国」を築く新たな形の国家と宗教の関係が求められている。(織)

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