19日からの胡錦涛首席の訪米を前にして、米国元国務長官のH・キッシンジャー博士が1月15-16日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に、今後の米中関係を展望する論説を載せている。かつて米中和解を推進した同博士が、二つの大国が歴史上とってきた「例外主義」(exceptionalism=自国が別格の優れた国であるという考え)の中身などを比較していて参考になるので、抜粋して紹介する。

・両国とも、「自分たちこそ比類なく優れた国民であり、他国民は自分たちにあこがれを抱いて当然」と考えている。

・米国は、他の国々が米国的価値観を受け入れる程度に応じて、その国に対する接し方を変える。一方中国は、「もともと中国こそ世界に冠たる存在であり、ここ2百年ほど相対的に弱かったのが異常事態だった」と考えている。

・米国は、国際問題に関与するも手を引くも自分たちの意のままであるかのように行動してきた。一方、自らを「中華」と称する中国には、国々の平等という概念自体がなく、他国はすべて何らかの意味で中国の属国であると捉えてきた。

・米国は、「あらゆる問題は解決可能である」という問題解決的アプローチを身上とし、何事にも具体的解決策を求める。これに対して中国は、「究極の答えがある問題などほとんどない。どんな解決策も、ひとつの通過点にすぎない」と考え、矛盾を矛盾のまま取り扱うことを苦にしない。

・交渉が暗礁に乗り上げると米国人は落ち着きを失うが、中国人は心を乱さない。交渉ごとのメカニズムにおいて暗礁はつきものと考えているからである。

などなど。要するに、米国は自らの「価値観」の正しさを信じ、それに基づいて直線的に答えを出そうとする。一方の中国は自らの「存在」に強い自負を抱き、矛盾や短期的成果を気にせず、長期的に目的を遂げようとする。同じく自己中心性の強い大国でありながら、本誌2010年7月号で奥山真司氏が紹介している「順次戦略と累積戦略」の違いを思い出させる。(T)

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