政府は、福島県楢葉町の避難指示を5日に解除した。福島第一原発事故による放射能漏れで、避難指示が出された地域の解除は3カ所目になるが、全域での解除は初。各紙が報じている。

楢葉町の人口約7400人に対し、帰宅に向けた準備宿泊に申込んだのは約780人だという。昨年10月の意向調査では、「(解除後に)すぐに戻る」が9.6%、「条件が整えば戻る」が36.1%だった。

帰宅に向けた課題として、町内にあるスーパーなどが仮設店舗のみであることや、医療機関の本格的な再開は10月以降であることなどが挙げられる。また、飲み水の水源である、上流の湖の泥に高濃度の放射能汚染が発見されたが、「表層の水には影響がない」として除染されないことへの不安の声も出ている。

政府は2020年の東京五輪に際し、楢葉町を震災復興の象徴として打ち出す予定で、特に力を入れているという。しかし、4年半が経過し、避難先に自宅を建てた人もおり、すべての人が地元に戻る可能性は減っている。

復興を目指すことは大事だが、なぜこのような事態に陥ったのかについて、政府はしっかり反省すべきだろう。

そもそもの避難基準である、年間被ばく20ミリシーベルトが厳しすぎたという指摘がある。100ミリシーベルト以下の被ばくで健康被害は確認されておらず、200ミリシーベルトで、がんになる確率が1%上がる程度。にもかかわらず、「奇形児が生まれる」「がんになる」などの風評が多く流れたため、人々の恐怖心があおられ、復興が遅れた。

その結果、避難生活が長引いて、避難者に大きな負担がかかった。原発事故による放射能漏れそのものでは死者が一人も出ていないにもかかわらず、避難生活でのストレスで多くの人が亡くなったのは、避難指示という誤った判断をしたことによる「人災」といえる。

楢葉町を事故以前よりも活性化させ、また、東日本大震災の経験を日本の智慧に変えていくべきだ。その智慧には、原子力や放射能についての正しい知識を普及させ、正しい判断ができるようにすることも含まれるだろう。(居)

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2015年3月10日付本欄 3.11東日本大震災 放射線での死亡はゼロ 「福島は安全だ」

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2014年4月号記事 東日本大震災から3年 - 安倍首相、前政権による福島「強制連行」をまだ続けますか?

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