安倍談話では、日本が第一次大戦後つくられた不戦条約や国際連盟による「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていったこと、進むべき進路を誤り、戦争への道を進んできた、という点が述べられていました。

あたかも第一次大戦後につくられた「新しい国際秩序」、いわゆるヴェルサイユ体制に正統性があるかのような言い方です。

しかし、国際政治学者として有名なE・H・カーや、対ソ封じ込め作戦を提唱したジョージ・ケナンがいみじくも指摘しているように、そのような「新しい国際秩序」は、第一次大戦に敗戦したドイツに巨額の賠償金を科すことで半主権国家にして、その経済的政策においても中産階級を没落させた結果、ヒトラーの台頭を招いたのは明らかです。

結局その「国際秩序」は、第一次大戦後から第二次大戦勃発の間の「危機の20年」にしか存在しえなかったのです。