イギリスの総選挙(下院、定数650)は7日に投開票され、キャメロン首相率いる保守党が331議席を獲得し、単独過半数を制した。投票直前まで支持率が拮抗していた労働党は、議席を減らし232議席にとどまった。

投票前は、保守党と労働党の接戦となり、どの政党も過半数に届かないという見方が強かったが、保守党が予想外の勝利を収めた形となった。また、スコットランド民族党(SNP)もスコットランド地方で労働党の議席を奪い、解散時の約9倍の56議席を獲得した。

保守党の勝因の一つは、キャメロン政権下での経済面の実績への評価とされている。昨年の経済成長率は、先進7カ国で最高の2.8%を記録し、失業率も6%を下回るなど好調だ。財政再建も進め、労働党政権時代に膨らんだ財政赤字も3割以上削減した。

もう一つの勝因は、「スコットランド独立を訴えるSNPと国を財政破綻に導く労働党が手を組めば、英国は存続の危機に瀕する」と訴えたことだ。労働党とSNPが連立政権を樹立し、「イギリス分裂」が現実となる恐怖心から、浮動票が保守党に流れたと言われている。

今回の総選挙で、イギリス分裂を防いだことは、日本も歓迎すべきことだろう。スコットランドでは来年に議会選挙を控えているが、今回SNPが躍進したことを考えれば、今後、「スコットランド独立」を求める声が強まる可能性もある。だが、経済面のみならず防衛面から見ても、イギリスが分裂してはならない。

ただ、総選挙の結果を喜んでばかりもいられない。イギリスは現在、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創立メンバー入りするなど、中国経済との結びつきを強めることで経済を安定させる戦略を取っている。

キャメロン首相は2012年、中国に迫害されているチベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世と会談した。すると、英中関係は冷え込み、イギリス企業が中国市場から締め出しをくらうなど、痛い目にあった。その後、キャメロン首相は、中国の人権問題に触れなくなり、財界関係者を引き連れて訪中するなど、中国にすり寄っている。

だが本来、目先の経済的な利益に目がくらんで、政治的自由のない中国との結びつきを強めてはならない。それは、中国の人権弾圧や虐殺、覇権主義の拡大に手を貸すことになる。イギリスの繁栄は、中国との結びつきを強めることで得るのでなく、日米などの自由や民主主義、資本主義という価値観を共有する国との結びつきを強めることで、成し遂げるべきだ。(泉)

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