安倍晋三首相は3日、2012年12月に発足して以来、戦後最長となっていた内閣の改造を行った。全18人の閣僚のうち、初入閣者は8人で、女性閣僚は歴代最多の5人。また同日、自民党役員人事も行い、総裁経験者の谷垣禎一氏が幹事長に就任。挙党態勢を整え、政権の安定を図りたい構えだ。

一連の人事刷新の表向きの理由は、安倍首相が掲げる政策をより内閣に反映させたいためだ。女性の社会進出は「女性活躍推進担当大臣」で、アベノミクス効果を地方にまで波及させる考えは「地方創生担当大臣」で、それぞれ示されている。一方、この裏にある意図として、首相と馬が合わない石破茂幹事長の異動や、党内で控える約50人の「入閣待機組」の不満を封じ込めつつ、消費税の10%引き上げへの布陣を固めるためとの見方がある。

だが、こうした理由があったにせよ、アベノミクスで一定の成功を収め、集団的自衛権の解釈改憲を断行した安倍首相が、この時期に内閣改造をする理由が判然としない。同首相を応援する保守系識者からも、改造の必要性が叫ばれた気配もない。むしろ、意見としてあるのは、内閣改造自体に関心が集まっていないということだ。

ロイター通信(1日付)は、「海外勢の関心低い安倍内閣改造」と題した記事で、「具体的な政策においても、現状の政策の延長では、手詰まり感が漂う」と述べ、主要経済閣僚の顔ぶれが変わらない改造に、市場の関心度は低いとした。

市場からも強い期待感が示されていないとなれば、今回の交代劇は、やはり「党内の不満を解消するための改造」であり、結局は国民不在のものであると断じざるを得ない。国民にとって、「入閣待機組」などの不満解消は重要ではなく、単なる「党内の政争」に過ぎない。それよりも、目前に迫る中国の脅威から国民を守り、停滞する経済を打破することこそ、優先すべき政策であるはず。

安倍首相のカラーがあるとすれば、靖国参拝を続ける、保守的な言論が目立つ稲田朋美氏が政調会長になったぐらい。しかし、安倍政権は何を目指したいのか、ポリシーが何なのかがはっきりとしない。そういう意味では、「ノーサプライズ内閣」と言えるかもしれない。(山本慧)

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