医薬品ネット販売会社「ケンコーコム」と「ウェルネット」が、「厚生労働省が省令により市販薬のインターネット販売を規制する行為は違法である」として、国を相手にネット販売権の確認を求めた訴訟の控訴審判決が26日に言い渡され、東京高裁は、先にこの訴えを退けていた一審東京地裁判決を一部取り消し、その権利を認めた。

医薬品ネット販売に関しては、2009年6月に施行された薬事法改正では、その副作用の強さによって市販薬を3分類。それを受けて、厚生労働省が省令により、「市販医薬品は薬局などでの対面販売を原則とし、ビタミン剤など低リスクの第3類を除き、インターネットや電話による通信販売を禁止」する旨を通達していた。

先の一審の東京地裁では、「健康被害を防止するための規制として、必要性と合理性が認められる」として、2社の請求を退けていた。

今回の高裁判決では、「改正薬事法がネット販売などの一律禁止を予定したとは認められない」と指摘。「法律の委任がなければ省令で権利を制限することはできず、販売規制は委任の範囲を超えて違法」と判断した。

一方、省令の無効確認などの訴えは、一審同様に不適法として却下した。

ネット販売は利便性があり、対面販売のみに法律で限定してしまうことは、確かに行政権の逸脱であり、薬局やドラッグストアなどの既得権確保というそしりを免れないだろう。とはいえ、医薬品販売は利便性だけで判断されて良いものでもないことも確かである。

医薬品のネット販売に関しては、その権利を行使するならば、それに伴う「義務の部分を詰めておかなければならない」ということと思われる。

すなわち、「もしネット購入後に何らかの健康被害が起きた場合に、販売会社としてはどのような責務を果たせるか? 果たさねばならないのか?」という点を明確にしなければならないということだ。そして、これは双方向性のネットの強みを生かし、さらにリスク保障においても損保会社と組むならばヘッジできる問題ではないかと思われる。

要するに、「どのサービスを選ぶかは、行政が決めるのではなく購入する側のお客が決める」ということだ。そして、サービスを提供する企業の責務として、厚生労働省の仕事を企業内に内包する必要があるということだ。それが、官による規制を極力撤廃して自由の領域を拡大していくための道であろう。(寺)

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2008年9月号記事 規制緩和・撤廃にアクセルを

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