中国歴史教科書から透けて見える、反習近平派の巻き返し【澁谷司──中国包囲網の現在地】

中国歴史教科書から透けて見える、反習近平派の巻き返し【澁谷司──中国包囲網の現在地】

 

《本記事のポイント》

  • 「文革」の復活を目指す習近平氏
  •  歴史教科書、「文革」の擁護・否定の揺れ動き
  •  いつクーデターが起きてもおかしくない!?

 

 

中国共産党は表向き、「文化大革命」(1966年~76年。以下、「文革」)を否定している。81年の11期6中全会で、「建国以来の党の若干の歴史問題についての決議」が採択され、毛沢東主席が起こした「文革」は「誤り」だったと、はっきり認められたのだ。

 

 

「文革」の復活を目指す習近平氏

しかし周知の通り、習近平政権は「文革」を復活させようとしている。おそらく習主席は毛主席と肩を並べる存在か、それ以上になることを目指しているのだろう。

 

具体的には、次のような事例である。

 

第1に、2015年ごろから、「文革」時代の「密告」制度が復活した。例えば、生徒・学生が"誤った思想"を持つ教師・教授を当局に「密告」している。

 

第2に、19年10月以降、中国教育部(文科省に相当)が全国の学校図書館で、共産党を批判する本などの焚書を奨励している。そのため、文化的遺産である相当数の書物が焼失した。

 

第3に、20年7月、『人民日報』が「下放」(上山下郷運動)を推奨した。学生らが"自発的"に農村へ行くという建前だが、実際には、「強制的」に農村へ送り込まれた。「文革」時の1968年には、毛主席は都市の知識人青年約1600万人を農村へ送り込んだ。だが、その多くは都市へ戻ることができなかったという。

 

これらの政策は、「文化小革命」「第2文革」とも呼ばれ、現在、猛烈な反発を受けている。

 

 

歴史教科書、「文革」の擁護・否定の揺れ動き

こうした、共産党の「文革」に対する距離間の揺れ動きが、中国の教科書にも見られるのが興味深い。

 

9月4日付『多維』は「高級なブラック(党の理想、信念、目的、政策などの極端な解釈-引用者)か? 中国共産党の誤りを是正し、『文革』に関する見解を回復させる」という記事を掲載した。そこに教科書改訂の経緯が記されており、共産党の内部事情を知る手がかりになる。

 

過去3年間、歴史教科書では「文革」に関する記述が毎年書き換えられてきた。

 

まず2018年版は、従来の教科書と異なり「文革」という章をなくし、「苦難の探求と建設の成就」という項目へ統合した。そして、それまで教科書に書かれていた毛主席の「過ち」などの表現を削除している。

 

さらに、「文革」は「新中国建国以来、党と国と人民に最も深刻な挫折をもたらした」としながらも、「複雑な社会的・歴史的理由で発動された」と弁明。「社会主義国の歴史は非常に短く、わが党は社会主義とは何か、社会主義をどのように構築するかについて十分明確にしていないため、その探求に遠回りをした」と「文革」を擁護したのだ。

 

この「文革」に対する"同情"と"美化"に関して、多数の批判がなされた。18年版を見た大半の人々は、これは国政の「左」旋回(中国語の「左」は日本語の「右」の意味)の兆候であり、中国が「昔の道」に戻るのではないかと心配した。

 

しかし、19年版の教科書は、前年版の「探究」「回り道」「挫折」「複雑な原因」などの弁明表現を「『文革』はいかなる意味でも革命や社会進歩ではないことを証明した」と改めた。

 

さらに、20年版の教科書では、学習の"焦点"に「『文革』の理論と実践は間違っている」と明記。「文革」は「いかなる意味でも革命や社会進歩ではなく、指導者の"過ち"で、『反革命集団』に利用され、党・国家・人民に深刻な災いを招く内紛だったことを、事実が証明されている」と従来の共産党の公式見解を復活させた。

 

以上が、記事の概要である。

 

 

いつクーデターが起きてもおかしくない!?

教科書が「文革」擁護に動いたのが、18年版であった。習近平政権が、前年の17年、ないしはそれ以前から、「文革」への評価を変更しようとしていたことが窺える。そして「習近平派」が一時、党内で優勢になった結果ではないだろうか。

 

ところが19年には、「反習近平派」(中心は李克強首相)が徐々に巻き返し、20年には、以前の「文革」否定に戻っている。これは、18~19年にかけて「反習派」が党内で支配的になったことを物語るのではないか。

 

もちろん、だからと言って共産党全体がすぐさま、習主席の意に反する方向に動き出すわけではない。総スカンを食らっていたとしても、習主席が依然として、軍・武装警察・公安などを掌握している。とはいえ、いつ習主席に対するクーデターが起きても不思議ではない状況にある。直近では、今年3月、郭伯雄の息子、郭正鋼がクーデターを起こしたと伝えられている。

 

それにしても、共産党は一度、「文革」を明確に否定しておきながら、習主席になって再び「文革」を再評価するというのは、どういう訳だろうか。中国では、未だに普通選挙の実施などといった民主主義が根付いていないため、同じ過ちを繰り返してしまうのだろうか。

 

アジア太平洋交流学会会長

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

 

 

 

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タグ: 澁谷司  中国包囲網の現在地  文化大革命  習近平  文化小革命  歴史教科書  クーデター  民主主義  李克強  

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