Phtograpghs by Juan Carrera(ホアン・カレラ)

2020年6月号記事

カメレオン、乗り移り、憑依型……。

"かかった"演技の秘密

「あの演技、"乗り移って"いたよね」─。

"憑依型"と言われる演技の舞台裏に迫った。

(編集部 飯田知世)

Special Interview

憑依を演じても、憑依されない理由

映画「心霊喫茶『エクストラ』の秘密─The Real Exorcist─」が、5月15日から全国で公開される。本作の杏花役で、複数の映画祭で最優秀助演女優賞を受賞した希島凛さんに、撮影の舞台裏を聞いた。

希島 凛

Profile

(きじま・りん)1996年生まれ。主な出演作は、映画「光り合う生命。」(2019年/東京テアトル)、「心に寄り添う。」(18年/東京テアトル)。そのほか、テレビドラマや舞台など、出演多数。映画「心霊喫茶『エクストラ』の秘密─The Real Exorcist─」杏花役で、第17回モナコ国際映画祭、エコ国際映画祭で最優秀助演女優賞を受賞。

「飛び降りたら……楽になれるっていう声がするの……」

映画「心霊喫茶『エクストラ』の秘密─The Real Exorcist─」の特報映像は、このショッキングな言葉で始まる。声の主は、女優の希島凛さん。女優志望の大学生である杏花役を演じた。

希島さんが演じた杏花とは、一体どういう女の子なのか。

「純粋な女の子だと思います。うれしい時はうれしいって言うし、憎たらしい時はそういう感情も出すし(笑)。でも、『自分が悪い』と気づいたら、ちゃんと『ごめんね』と言うこともできる。この映画の登場人物で、ある意味一番素直なのかなと」

「気づいていない」って危ない

杏花を演じるにあたり、希島さんは「リアルさ」を大切にした。

「身近な人やすれ違う人たちから、『杏花らしさ』をインプットしていって。杏花が着ていそうな、丈がちょっと短いスカートを買ってみたり、SNSで女の子の心境が吐露されているアカウントを見つけて、"潜入捜査"をしたり(笑)。カフェで話している女の子の会話に、少し聞き耳を立てたこともありました」

実は杏花は、千眼美子さん演じる映画の主人公・サユリのことが気に入らない女の子でもある。杏花の恋人であるイサムが、エクソシスト(降魔師)であるサユリの手伝いを始めたことで、2人の仲を怪しむようになったのだ。

杏花をリアルに演じるため、幸福の科学副理事長の大川咲也加さんが手がけた脚本をもとに、希島さんは杏花の感情をつくりこんでいった。

「1カ月くらい、脚本に沿って細かく、杏花になりきって日記をつけました。『今日は大学デビューでーす!』『どんな男の子いるのかな~。イケメンいるかな?』というところから始めて」

大学生活への希望で始まった杏花の日記。しかし、脚本が進むにつれて、ある変化があった。

「徐々にサユリが憎たらしくなっていって。セリフとして脚本に書かれていない杏花の感情もバアーッと書いていったのですが……、これはお見せできないです。もう、悲惨すぎるので(笑)」

杏花の日記に書かれていたのは、自分なら普段、言わない言葉。希島さんは、ある怖さを感じた。

「『気づいていないことに怖さがある』といいますか。杏花は、恋愛にグイッといきすぎていると、周りが見えなくなってしまう部分もあって。客観的に見て、そこは『ちょっと危ないな』と思いました」

しかし、そんな杏花の状態は「特別ではない」という。

「『死ね死ね死ね』とサユリにメッセージを送りつけたり、『なんで電話に出てくれないの』とイサムに怒ったり……。杏花のように、ズバズバ言っている女の子も、多いのではないかなと。私の友人でも、杏花と同じように悩んでいる人はいますし、中には自傷行為に走ってしまった人もいます。もしかすると、四谷怪談のお岩さんも、こんな感じだったのかな……」

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