2019年10月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第83回
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
MMTを「生き方」で考える
「消費増税に備え、今年は秋物を早く展開します!」
婦人服ブランドからこんなダイレクトメールが届きました。日本中の企業が、10月からの消費税10%に身構えているのではないでしょうか。
特に今回は、消費増税で内需が冷え、同時に、米中貿易戦争で外需も冷え込む、ダブルパンチが予想されます。向こう数年、日本経済に明るい話題が見つかりません。
さらに、数十年後には「老後資金2000万円」問題も控えており、企業も個人も先々の見通しが立たない状況です。
そんな日本に希望をもたらすには、経済を成長させるしかありません。
そのために最も有効なのは「消費減税」です。参院選では、あらゆる野党が、消費増税の中止・凍結を訴えました。立党から10年間、一貫して消費減税を訴えてきた私たちにとっては、隔世の感があります。
脚光浴びた「借金し放題」説
「れいわ新選組」も参院選で「消費税ゼロ」を掲げて躍進しましたが、根本思想は幸福実現党と真逆です。元号を冠しているので、保守かと思いきや、共産党と共闘する極左政党です。
気になったのは、この政党を応援する一部識者たちが根拠としていた、「現代貨幣理論(MMT)」。簡単に言えば、「自国通貨で国債を発行している限り、インフレが起きなければ、財政赤字はいくら膨らんでも大丈夫」というものです。
際限なきバラまきも正当化しかねない理論で、米民主党のバーニー・サンダース議員が取り上げるなど、社会主義との相性もいいようです。
参院選中、「幸福実現党の減税・財政出動政策は、れいわと何が違うのか」と聞かれました。
幸福実現党の経済政策は、次のような全体像です。
「まず減税で景気回復させる。その上で、未来産業への投資や規制緩和によって経済成長させる。そうすれば、税収が増えて財政黒字になる」
簡単に言えば、「まず経済成長を優先させる」ということであり、れいわの政策が「貧しさの下の平等」につながりかねないのに対し、私たちは自由からの繁栄を目指します。
MMTには、経済学者や金融関係者などからも、多くのツッコミが入っています。例えば同理論は「政府は通貨を発行する権限がある。だから、借金を返せなくなることはない」と主張します。しかし、「それなら、もともと国債など発行せず、現金を刷って使えばいい」という話になります。
道徳なき経済は犯罪
記憶に新しいところでは、リーマン・ショックの元凶となったサブプライム・ローンも、「収入がなければ、家は買えない」という当たり前の道義を、ノーベル経済学賞を受賞するほどの天才が複雑な金融工学で粉飾しました。だから、破たんしたのです。
MMTも、「返す当てのない借金」を推奨するならば、経済的にも道義的にも許されず、同じような結果につながるのではないでしょうか。
そもそも日本政府が国債を発行できるのは、「指導者たちはいい国家運営をして、経済を発展させ、税収を増やして借金を返せるだろう」といった信用あっての話なのです。
だからこそ必要なのは、政府が「どうすれば人々の収入が健全に増えていくのか」という知恵を、絞りに絞ること。そのビジョンを実現させる原資として、国債を発行できるのです。
二宮尊徳は「道徳なき経済は犯罪」と述べました。財務省のような「自分たちの帳簿さえきれいにすればいい」という発想も、多くの政党のような「バラまき政策で票を集めよう」という発想も、保身と怠惰の表れではないでしょうか。
経済・財政運営を担う人たちが、真に国民の幸福を願うならば、「人間の生き様を歪めることはないか」「まっとうな努力を促す政策かどうか」を点検する必要があります。
それはつきつめれば、「神仏の心にかなう社会をつくっていこう」ということでもあります。幸福実現党は、善悪の判断をないがしろにする唯物論との決別を目指し、この国を真の繁栄へと導いて参ります。