写真:Erik AJV / Shutterstock.com

《本記事のポイント》

  • 日本軍のコスプレは「中国を侮辱する」こと!?
  • 漫画を描いて逮捕された中国人女子大生
  • 日本人は「日中友好」の嘘に騙されるな

中国には、「精神日本人」(以下「精日」)という不思議な言葉がある。

中国人の中には日本が好きで、精神的に日本人になり切ろうとする人がいる。人によっては、日本軍のコスプレをして、あたかも自らが日本人であるかのように振る舞う。

しかし、習近平政権においては、こうした行為は過度に「日本を崇拝」し、「中国を侮辱する」ものとして罪になる。とりわけ、日本の軍服を着ることは「日本軍国主義」を崇拝し、「我が中華民族を憎んでいる」ということになるらしい。

漫画を描いて逮捕された女子大生

その一例として、安徽省准南市在住の女性漫画家、張冬寧(ちょう・とうねい)さん(22歳)が拘束された例を挙げたい。

彼女は日本のマンガが大好きで、豚の頭を持った人(恐らく中国人)の風刺画を300枚以上描き、SNSに発表してきた。それが中国当局の逆鱗に触れたのだ。

当局の説明では、これらの作品は意図的に歴史的事実を歪め、中国の人々の生活習慣を辱めることをテーマにしているのだという。「国家とすべての中国人に対する悪質な攻撃」「中国人の感情を深く傷つける」「国家の尊厳を踏みにじる」として、非常な悪影響を社会に及ぼすと断定した。

張さんはいったん日本に逃亡し、身を隠した。しかし、彼女が帰国した際、「精日」という理由で公安に逮捕されている。同じような理由で、日本が好きな遼寧省に住む別の人も、「精日分子」ということで逮捕された。

「日中友好」の嘘に騙されるな

今の中国では、日本が好きだと「反中」となり、「中国を侮辱している」と見なされている。

翻って、ある日本人女性が、中国が大好きであるために、チャイナドレスを着てお団子ヘアで、我が国の街を歩いたとする。だからと言って、「日本を侮辱している」「国家の尊厳を踏みにじった」として、罪に問われることはない。周囲も、彼女がコスプレを楽しんでいるぐらいの感覚しか持たないだろう。

ところが、中国ではそうは受け取られないのである。なぜか北京の政治指導者は、「親日=反中」という短絡的思考を持つ。そこに論理の飛躍があっても、何の疑問も持たないようだ。

中国共産党は時に「日中友好」を謳い、日本の政治家もそれを"真に受ける"ことがある。しかし、上記のような環境下で、「日中友好」などあり得るのだろうか。日中両民族が、互いを認め合い、互いに敬意を払うからこそ、「友好」は成り立つはずだ。

拓殖大学海外事情研究所

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

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