《本記事のポイント》

  • 米中通商協議で、中国が対米輸入額を増やすと合意
  • 通商協議が行われる背後で、中国は南シナ海での覇権拡大を続けている
  • 「米中が太平洋を二分する世界」を防ぐためにも、南シナ海進出を止めるべき

貿易摩擦に関する協議を続けていた米中両国がこのほど、合意に至った。

両政府は19日、ワシントンで行っていた通商協議について共同声明を発表。アメリカの対中貿易赤字を緩和するために「中国がアメリカのモノとサービスの購入を大幅に増やす」とした。

ドナルド・トランプ米大統領が中国製品に大幅な関税をかけるとした件について、劉鶴(リウ・ホー)副首相は「米中双方が貿易戦争に乗り出さず、互いに対抗して関税を課すのをやめることで合意した」と述べたという。中国国営新華社通信が報じた。

また、争点になっていた知的財産権については、中国政府が「関連法規の修正を進める」としている。

中国側がアメリカからの輸入額をどれほど増やすかは明言されておらず、知的財産権についても「関連法規の修正」で効果が出るのかは不透明だ。ただ、合意に至ったことで、米中貿易摩擦が沈静化したとの見方が広がっている。

南シナ海に長距離爆撃機が着陸

その一方で、中国は覇権拡大を着々と進めている。

アメリカとの通商協議が行われていた18日、中国人民解放軍は、南シナ海の島で長距離核攻撃が可能な「H6K爆撃機」を含め、複数の爆撃機の離着陸を成功させたと発表。南シナ海の島に中国空軍の長距離爆撃機が着陸したのは初めてのことだ。

中国共産党の機関紙「人民日報(People's Daily, China)」のツイッターアカウントでは、爆撃機が離着陸する映像が公開された。

米ワシントンにあるシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は、爆撃機が着陸した島を、パラセル(西沙)諸島にあるウッディー島だと分析。同島は、中国、台湾、ベトナムの三国が領有権を主張している。

南シナ海は太平洋へのスプリングボード

中国は、パラセル諸島やスプラトリー(南沙)諸島で軍事拠点の開発を進め、着実に南シナ海での覇権を強めている。もし南シナ海を中国に抑えられてしまえば、どうなるか。

例えば、南シナ海のマレー半島とスマトラ島の間のマラッカ海峡は、世界の石油供給量の約3分の1、日本の輸入原油の8割以上が通航している。もし中国が、マラッカ海峡と日本を結ぶ海上輸送路(シーレーン)を封鎖すれば、日本は資源を断たれ、中国の手に落ちたも同然となる。

そうなれば、習近平政権がしきりに唱える、「太平洋を米中で二分する世界」が近づく。

南シナ海での覇権拡大は、中国が世界の半分を支配するという「中国の夢」の実現に向けたスプリングボードと言える。

通商合意の背後で進む南シナ海進出に対して、アメリカはどう応じるのか。

もしトランプ政権が対中融和に傾けば、中国の覇権拡大はますます進むだろう。

日本は、中国の危険性をトランプ政権に訴え続けるとともに、速やかに自衛隊を「国防軍」と位置づける形での憲法9条改正や、自衛のための核開発に着手しなければいけないことは明らかだろう。

(片岡眞有子)

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