《本記事のポイント》

  • モラー特別検察官が、トランプ氏本人を起訴しない旨を弁護団に伝えた
  • モラー氏の捜査が共謀ありきの不公正なものだと、批判の声があがっている
  • 必死の捜査にもかかわらず証拠がないことが、トランプ氏の潔白を示している

米大統領選においてトランプ陣営とロシア政府が共謀したとする「ロシア疑惑」に、決着がつきつつある。

中心的に捜査を進めてきたロバート・モラー特別検察官が、トランプ米大統領本人を起訴しないという考えを大統領の弁護団に伝えていた。弁護団に加わるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が16日、米FOXニュースやCNNに明かした。

司法省は、現職大統領を起訴すべきではないという方針をとっている。モラー氏はこの方針に沿う旨を述べたという。

11月に中間選挙を控えていることから、モラー氏による捜査は終了か一時中断されるとの見方が強い。今回の判断に関係なく、下院が大統領を弾劾訴追する可能性は残されているものの、モラー氏と弁護団の攻防にはいったん幕が降りたと言えるだろう。

特別検察官を設立も共謀の証拠なし

モラー氏が特別検察官に就任したのが、2017年5月17日。それからちょうど1年が経過するが、共謀の証拠は出ていない。

元トランプ陣営から複数の人物が、「不正」について取り調べを受けたり起訴されたりしたが、どれも個人の罪でしかなく、トランプ陣営とロシア政府の共謀の証拠にはならなかった。

2月には、米大統領選に干渉したとしてロシア国籍の人物とロシア関連の団体が起訴されたが、これも共謀を示すものではなかった。彼らが応援したのは共和党・民主党の両陣営であり、トランプ陣営への肩入れではなく、戦局の混乱を目的としたものとみられる。

特別検察官を設置してまで捜査が行われた結果、明らかになったのは、「共謀の証拠がない」ということだった。

「モラー氏の捜査は憲法上のラインを超えた」

そもそも、モラー氏の捜査のやり口がトランプ氏を引きずり下ろすという目的ありきで行われているとして、アメリカでは批判の声があがっている。

モラー氏の捜査チームは昨年10月、元トランプ陣営選対本部長のポール・マナフォート氏について、ロシア疑惑とは関係性の薄い罪で起訴し、取り調べを続けている。しかしその本意は、様々な理由をつけて捜査を続けることで、ロシア疑惑を裏付ける糸口をつかむためだという指摘もある。

米連邦地裁判事のT・S・エリス3世氏は4日、モラー捜査チームに対してこのように述べた(5日付FOXニュース)。

「あなたたち(捜査チーム)は、マナフォート氏にはあまり興味がない」「あなたたちが本当に関心があるのは、トランプ氏の弾劾などにたどり着くために、マナフォート氏からどのような情報を得られるかということだ」

この発言を受け、司法長官の特別補佐官を務めた経験を持ち、現在はノースウェスタン大学のプリッカー法科大学院の教授を務めるスティーブン・カラブレシ氏はウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿。「モラー氏の捜査は憲法上のラインを超えた」と批判した(13日付)。

また、米ハーバード大学法科大学院の憲法学者、アラン・ドゥーシュビッツ氏も、モラー氏の捜査が際限なく拡大していることを指摘した上で次のように述べている(4月25日付FOXニュース)。

「伝統的な市民的自由の擁護者であるリバタリアンの多くが、トランプ大統領への激しい憎しみによって、中立的な市民の自由と万人に対する公平な裁判という、自らの長年にわたる取り組みを消し去ろうとしている。これは、私たちすべての権利を脅かす危険な動きだ」

日本ではあまり報道されないが、リベラルな識者ですら、モラー氏の強硬的な捜査方法に疑問を呈している。

こうした、批判を受けるほどに不公正な捜査を続けたにもかかわらず、共謀の証拠は出ていない。皮肉なことだが、モラー氏の必死の捜査が、逆説的にトランプ氏の潔白を示していると言えるだろう。今後、中間選挙に向けてモラー氏がどのように動くか注目したい。

(片岡眞有子)

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