世界平和を創る3つの条件 - 編集長コラム
2015.06.29
2015年8月号記事
編集長コラム Monthly Column
世界平和を創る3つの条件
本欄の歴史問題をテーマにしたコラムに大幅加筆した『「奇跡」の日本近代史―世界を変えた「大東亜戦争」の真実―』が発刊されました。戦後70年の今年、日本と世界の未来を創造していくために、必読の一冊です。
綾織次郎著
HSU出版会刊
今年は国連創設70年。中国の習近平国家主席は今年9月、国連で先の大戦の「戦勝国」として演説し、「戦後体制の維持」をアピールしようと意気込んでいる。
国連は、日本やドイツと戦った軍事同盟「連合国」そのもの。今も国連憲章は日独を「敵国」と定める。両国が不穏な行動を見せたと中国などが判断すれば、いつでも自由に武力攻撃していい。習近平氏が「戦後体制の維持」を訴えたいのは当然だろう。
一方、国内では安全保障法制の議論が続いているが、国民には分かりにくい。そもそも経済大国の日本が、米軍に守られている状態自体が異常だからだろう。
戦後70年の今年は、いい加減「自分の国を守れない」「敵国」を脱し、日本が「平和と正義」の担い手となる出発点にしたいものだ。
どうすれば平和を創り出せるか
世界のバランス・オブ・パワーはどう動いてきたか
1600年代~1700年代
宗教戦争から、仏墺などによる勢力均衡へ
1800年代
ナポレオン戦争後の仏墺英露プロイセンの5大国による勢力均衡(「相互利益」と「共通の価値観」が安定をもたらした)
1900年代前半
新興国の米独日ソが勢力均衡を崩した
1900年代後半
米ソ冷戦による勢力均衡
2000年代
米中やイスラム圏の「文明の衝突」の時代
では、「平和」をどう創り出したらいいのか。
古代ギリシャの哲学者プラトンは、理想国家が軍人、商人、哲人政治家によってつくられると考えた。軍人の「勇気」、商人の「節制」、哲人政治家の「知恵」が組み合わさり、正義ある国家が実現するというのだ。
国際政治学には、これを国家間の関係に応用し、「平和」を理解する考え方がある。つまり、 「軍事的な勢力均衡(バランス・オブ・パワー)」「相互利益」「共通の価値観」の3つがバランスするとき、平和が形づくられる という説だ。
ヨーロッパの国際政治を例にとれば、以下のようになる。
1600年代前半は、宗教戦争に明け暮れていたが、1648年のウェストファリア条約の後、フランスとオーストリアを中心に「勢力均衡」が成り立った。
1700年代半ばには、英露とプロイセンを加えた5大国の勢力均衡ができあがったが、各国間の商業取引の発展で、そこに「相互利益」も働くようになった。
ヨーロッパの100年の平和
フランス革命とナポレオン戦争の戦後処理を行った1814年のウィーン会議以降は、「共通の価値観」も加わった。
5大国はみな君主制国家で、君主を倒したフランス革命とナポレオン的帝政への警戒から、互いに君主を守るために国際秩序を維持しなければならない、という合意ができた。その結果、 一時期を除き、ヨーロッパは約100年間、平和を享受した。
しかし1800年代後半、それが新興国ドイツによって壊された。宰相ビスマルクの手腕で統一されたドイツはその後、力を持て余し、第一次大戦になだれこんだ。
第一次大戦後、アメリカの大統領ウィルソンは「人類の議会」として国際連盟をつくれば平和になると提案した。しかし孤立主義の国民や米議会が加盟を拒否。ウィルソンは「勢力均衡は汚い争いだ」と否定しており、ウィーン体制下の平和の条件が次々と崩れた。
「相互利益」は1929年からの世界恐慌でブロック経済ができて分断。「価値観」は、新興国の米独日間でばらばらだった。つまり、アメリカは民主主義を唱えつつ帝国主義的に行動し、ドイツは全体主義化し、日本は欧米の人種差別に異議を唱えた。そこにソ連が共産主義の大国として出現し、第二次大戦に向かっていったのだった。
21世紀は危険な時代
では、2000年代の前半はどういう時代なのか。
1900年代後半、米ソの「勢力均衡」と、各陣営内の「相互利益」「共通の価値観」があって、不思議な安定が保たれた。その冷戦が終わり、アメリカ単独で世界を動かす時代になるかと思われたが、アメリカ自体に迷いが生じている。
オバマ大統領が「世界の警察官をやめる」と宣言し、国民も内向き路線を支持。一方、中国はアジア支配を狙う。イスラム圏との戦争には終わりが見えない。アメリカがじりじり後退し、「勢力均衡」が崩れ始めている。
中国が仕掛けるアジアインフラ投資銀行(AIIB)などによって、国際通貨基金(IMF)などアメリカ中心の「相互利益」システムにも、ほころびが出ている。
「価値観」については、国際政治学者ハンティントンが「これからは文明の衝突の時代だ」と予言したように、キリスト教圏とイスラム教圏、中華圏がぶつかり合う。
これは、 今が先の二つの大戦の時代に劣らない、危険な時代であることを意味している。
(1)これからの「勢力均衡」策
今こそ「勢力均衡」「相互利益」「共通の価値観」がバランスした平和構想が必要だ。それを幸福の科学の大川隆法総裁はすでに示している。
大川総裁は2012年6月の法話「Be Strong」(注)で、こう述べている(和訳)。
「もし、国連がうまく機能すれば、彼らの正義が世界中に平和をつくり出すでしょうが、現在、国連は機能していません。ですから、世界は、『平和と正義』に関する新しい哲学を求めているのです。あえて申し上げますが、それは、幸福の科学にかかっています」
まず、 東アジアにおける中国と日本・アメリカとの「勢力均衡」を崩さないことだ 。アメリカは日中間の紛争時、「日本が独力で1カ月以上持ちこたえるなら助太刀しよう」という、腰の引けた戦略をとろうとしている。だから、独自の防衛力を飛躍的に高めなければならないし、中国の背後にいて核兵器を持つインドやロシアとの同盟・協商も抑止力となる。アメリカから見て、「そこまで日本がやるなら助ける」と言わせなければならない。
(2)これからの「相互利益」システム
中国によるAIIBは、アメリカ主導の「相互利益」システムの失敗が引き金だった。
アメリカがIMFなどを通じて各国に強要するのは、「政府の赤字を減らせ。あまり支出をするな」という“経済縮小"路線。途上国からすれば、「とやかく言わずに中国がお金を貸してくれるならありがたい」ということになる。
日本はアメリカと協調しつつ、大国の立場相応に途上国を助け、自立に導く役割を担うべきだ。日本の金融機関が資金を供給しつつ、現地の企業家を育てる。その製品を輸入して共存共栄を図る。そうやって各国の経済が拡大発展して初めて、100億人へと向かう人類に十分な仕事を創り出し、食べさせることができる。
(3)これからの「共通の価値観」
一人ひとりが幸福を追求できる 「自由と民主主義」は、中国やイスラム圏の人たちにも必要 なものだ。
中国には信教の自由も言論の自由もない。アメリカは迷いつつも、「自由と民主主義を世界に広げる」というウィルソン的使命に立ち戻る国。日本は、アメリカに常にそれを思い出させ、ともに努力するべきだ。
逆に、イスラム教圏に対しては、アメリカはキリスト教的使命感が強すぎて裏目に出ている。イスラム過激派を「絶対悪」とみなせば、戦争は永遠に終わらない。 かつてローマ帝国が異民族にも市民権を与えたような寛容さが必要だ。 それは根本的には、キリスト教とイスラム教が兄弟宗教で、実は同じ神を信じているという信仰観から出てくる。
ハンティントンは日本にキリスト教圏とイスラム教圏の「独立した調停者」の役割を期待した。日本が将来、「キリスト教国とイスラム教圏との戦争は、いったん日本の調停を経なければ許されない」と言うぐらいの立場に立っても構わないだろう。
精神的高みによる世界秩序
これらが幸福の科学の掲げる平和構想の柱だ。かつてのウィーン体制では「勢力均衡」の土台の上に、「利益」と「価値観」が乗っていた。幸福の科学の平和構想ではこれが逆転し、「共通の価値観」が「相互利益」と「勢力均衡」を再編成する可能性がある。つまり、 日本を中心とする精神的高みが世界秩序を創り出す発展性を秘めている。
この平和構想にもとづいて国連を改革したいものだ。受け入れられないなら、新しい国際機関を立ち上げてもいいのではないか。
かたや今の日本を考えると、プラトンが語った商人の「節制」については世界一かもしれない。一方で、軍人の「勇気」、哲人政治家の「知恵」は極端に欠けている。自分で自分の国を守れないし、哲人政治家は見当たらない。
日本を「平和と正義」の守護神とするために、武士道精神と哲人政治を復活させなければならない。それが世界史的に見た、幸福の科学と、大川総裁が創立した幸福実現党の役割だ。
(注)『Power to the Future』(大川隆法著 幸福の科学出版刊)所収
(綾織次郎)
今月の結論
1 日本は世界の平和と正義の担い手になるべきだ。
2 「勢力均衡」「相互利益」「共通の価値観」が平和を創る。
3 日本は精神的な高みで世界秩序を創り出せる。
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