イラク陥落の瀬戸際 シリア内戦を放置したオバマ外交のツケ
2014.06.15
米軍が撤退して3年、イラクが周辺国を巻き込んだ内戦へと転落しようとしている。
スンニ派の武装団体「イラクとシリアのイスラム国」(ISIS)がイラク第2の都市であるモスルをはじめ、同国西部やシリア東部の広い範囲を制圧し、首都バグダッドに迫っている。イラク政府と近い関係にあるシーア派のイランは、イラクがISISの手に落ちるのを恐れて部隊を派遣。イラクの北東部では、キルクークが少数民族で自治を主張しているクルド人の支配下におかれた。
90万人を数えるイラク軍は雲散霧消していっており、イラク政府は各地でコントロールを失いつつある。モスルでは、ISISの部隊800人が3万人のイラク軍を撤退させるという惨状だ。内戦による避難者の数は100万人にも上ると推定されており、人道的にも国際政治としても危機が迫っている。
オバマ米政権はISISに対する空爆をほのめかしているが、すでに陸軍を派遣する可能性はないと明言しており、アメリカの世論も、新たな紛争に巻き込まれることに消極的だ。イラクのマリキ首相は、ISISの台頭ぶりを見て、今年の初めからアメリカに支援を要請してきたが、オバマ政権は対話による解決にこだわって消極的な姿勢だった。
この一連の出来事で特筆すべきは、西側諸国の指導者に見られる先見性の欠如ではないだろうか。米国務省や退役軍人の間では、内戦中のシリアがISISの温床となっていると言われている。オバマ政権は、15万人以上の犠牲者を出し、現在も続くシリア内戦への干渉を、化学兵器を使ったかどうかで片付けようとし、軍事介入を差し控えた。それは明らかに事なかれ主義であり、内戦を放置してきたツケが今、ISISの伸長、イラク内戦、そしてイランの台頭という形で現れてきている。(中)
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