北朝鮮をめぐり緊張緩和の動き 「話し合い」は時間稼ぎにしかならない

2013.05.09

韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は現地時間7日、米ワシントンでオバマ大統領と首脳会談を行い、北朝鮮に対して歩調を合わせて対応することなどを確認した。同時に発表された米韓同盟60周年にあたっての共同声明には、両国が北朝鮮の非核化を目指して国際社会と連携し、挑発に対しては防衛力強化などで対応することなどを盛り込んだ。

2月の核実験以降、核攻撃をほのめかして威嚇するなどして戦争の危機を煽った北朝鮮に対して、米韓は対話を呼びかけることで緊張緩和を図ってきた。オバマ大統領は首脳会談後の共同記者会見で、北朝鮮が非核化に向けて具体的な行動を取ることを条件に、対話に応じる姿勢を示したが、これはケリー国務長官が4月の韓中日訪問で強調したメッセージと同じである。

北朝鮮側も緊張緩和を模索する動きを見せている。同国は4月初旬に中距離ミサイル「ムスダン」2基を日本海側に移動して発射準備を整えていたが、最近はこのミサイルが撤去された模様だ。別の場所に移されて格納されている可能性もあるが、北朝鮮は軍の警戒態勢を引き下げているという情報もあり、挑発路線をいったん転換した可能性も否定できない。

友邦として北朝鮮に食料や燃料を供給している中国にも、北朝鮮への態度に若干の変化が見られる。中国の大手国有銀行である中国銀行は7日、貿易決済を行っている北朝鮮の朝鮮貿易銀行に対して、取引停止と関連する口座の凍結を通告した模様だ。中国には、北朝鮮の挑発に備えて日米韓が防衛強化を図っていることで、今度は中国自身の安全が脅かされかねないという懸念がある。中国政府の意図は明らかでないが、今回の中国銀行の措置が、独自の金融制裁の可能性もあると見られる。

米韓の話し合いの呼びかけに対して中国も前向きな動きを見せ始め、朝鮮半島の緊張状態が若干和らぎつつあるように見えなくもない。しかし問題の核心は、国民を飢餓と政治的抑圧で虐げながら、核・ミサイル開発で周辺国を威嚇する北朝鮮という危険国家を、いつまで生かしておくのかという点にある。「話し合い路線」で一時は緊張が緩和されたかに見えても、それは時間稼ぎにしかならない。北朝鮮の悪魔的な国家体制を解体するまで、朝鮮半島の根本的な問題は解決しない。

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