富士火力演習は尖閣防衛を想定 離島防衛へ予算増は不可欠

2012.08.28

毎年夏、静岡県御殿場市の東富士演習場を会場として開催される富士総合火力演習が8月23日より開始され、26日には離島防衛を想定した一般公開演習が行われた。

もともと富士総合火力演習は普通科(歩兵)、機甲科(戦車・偵察)、そして特科(砲兵)の3職種を統合教育する、世界でも極めて珍しい教育を行う陸上自衛隊富士学校が主催する演習であり、一般公開しない夜間の射撃訓練なども行う。そこに高射学校や航空学校などの他の学校や陸自を中心とした他の実戦配備部隊なども参加する。

その火力演習で今回初めて離島防衛を想定した演習を実施し、海自P-3C対潜哨戒機が地上部隊の指揮用として初参加。また、新兵器の10式戦車や中距離多目的誘導弾が射撃を披露するなど自衛隊の統合戦力強化が強く印象づけられる演習となった。

この演習は尖閣問題で対立する中国の駐在武官も視察。戦闘機の爆撃をかいくぐった敵部隊の一部が離島に上陸し、それを陸自部隊が制圧する作戦行動を目の当たりとすることになった。

尖閣諸島への中国人不法上陸や韓国大統領の竹島上陸を受け、領土問題で毅然とした対応を求める国会決議が可決された。国家としての意志を示した点は評価できるが、今後は有言実行が求められる。

本誌では以前から、日米同盟の強化や、九州や南西諸島の防衛強化を訴えている。今年の政府の「防衛白書」でも沖縄の戦略的重要性を強調するようになり、離島防衛のための動的防衛力強化に力を入れ始めた。また、日米の統合作戦能力の強化、沖縄県与那国島への沿岸監視隊の配備、新型の地対空ミサイルや地対艦ミサイルの装備更新などにも着手してはいる。

ただ、大枠として防衛費の減額が10年間も続いており、有限実行のためには、来年度予算編成で防衛費の大幅増に舵を切れるかどうかがカギとなる。(弥)

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