2024年まで君臨する「プーチン皇帝」の誕生

2012.03.06

4日に投開票が行われたロシア大統領選で、プーチン首相が当選し、4年ぶりの大統領への復帰を決めた。約64%の得票で4人の対立候補に大差をつけたものの、04年の大統領選時の得票率70%には届かず、求心力の陰りを感じさせる勝利ではある。

プーチン氏は4日夜、支持者らを前に「私は勝つと約束し、そして勝った」と勝利宣言した際、右頬に涙が伝った。昨年12月の下院選での不正投票疑惑をきっかけに、プーチン氏の強権的で非合法色の強い政治手法が逆風にさらされてきたため、大統領復帰を決め、感極まったようだ。

プーチン・メドベージェフ政権は外交・安全保障面では、核開発を進めるイランを擁護し、国際社会からの制裁に反対を鮮明にしている。国連安保理のシリアへの制裁決議にも拒否権を発動して介入を阻止。アメリカへの対決姿勢を強めている。

国内においては、選挙結果の不正操作、メディア統制、多数のジャーナリストの不審死など非民主的な手法への風当たりは止むことがない。

そんな中でも、6割以上の国民が支持しているのは、ソ連崩壊後の政治的・経済的混乱を収束させた手腕への期待が今なお強いからだろう。

これで通算3期目で、憲法改正で任期が4年から6年に延長されたため、プーチン氏は今後2期12年、2024年まで務めることが可能となる。

強い指導者を求めるロシア人の気質からすれば、プーチン氏は理想的な指導者であり、2020年代まで続く「ロシア皇帝」が誕生したと言っていいだろう。

日本にとってはプーチン氏の北方領土での出方が注目されるが、1日夜の海外メディアとのインタビューで、「最終決着させたい」と表明。解決策は貿易や投資など経済協力が拡大する中で見つかるとの認識を示した。

中国の軍事的な台頭を考えるときに、日本の大戦略としては、アメリカとロシアとは軍事的にも協力的な関係を結んでおくことが望ましい。日米同盟がある手前、軍事協力は難しいにしても、まずは経済協力を進めることが対中国戦略上重要になる。

日本政府としてはこれまで、「二島先行返還」と「四島一括返還」との間で揺れ続け、対露交渉が混乱した経緯がある。しかし北方領土問題は、もはや単なる領土問題ではない。中国に対して日露がどう手を結ぶかという文脈で位置づけられるべきものだ。プーチン氏の「経済協力先行」のシグナルを大切にしたい。(織)

【関連記事】

2009年2月号記事 日本は「日印同盟」&「日露協商」で乗り切れ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=591


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