キャッシュレス比率8割のオーストラリアで手数料の消費者負担が禁止へ ─ 日本はキャッシュレス先進国の「現金回帰」傾向に学ぶべき
2025.08.16
《ニュース》
決済手段でキャッシュレスの割合が約8割に達しているオーストラリアでは、クレジットカードなどの手数料の消費者負担を禁止する案が浮上しています。同国では、「現金受け入れの義務化」も検討されており、現金払いの消滅が危惧されています。
《詳細》
オーストラリアではクレジットカードなどキャッシュレス決済の手数料を消費者が負担するため、小売業者も急速にシステム導入を進めました。国土の広い同国では、砂漠地帯に銀行の支店が少なく、事業者が常に釣銭を準備できるとは限らない、といった事情もあり、2015年に5割程度だったキャッシュレス比率は、2022年には76%に達しています。
一方、キャッシュレス決済の比率が上がったことにより、手数料負担は年間12億ドル(約1200億円)に達しています。オーストラリアの中央銀行・連邦準備銀行(RBA)は、「消費者が効率的な支払方法を選ぶ、という本来の目的をもはや果たしていない」としており、手数料の消費者負担を禁止する案が浮上しています。RBAは、クレジットカードを発行した銀行が小売業者から受け取る手数料を半減させることも計画しています。
この案について、マスターカードのオーストラリア・太平洋地域の社長は、銀行が手数料による収入が減った分を補填するため、年会費や金利の引き上げ、特典や還元率の引き下げで対応しようとすると指摘。実際、既にカード決済手数料の上限が引き下げられたイギリスでは、銀行がカードの金利を引き上げています。いずれにしても、消費者の負担増になると見積もられています。
オーストラリアでは、クレジットカードを持たない低所得者が、生活必需品を買いにくくなっているとして「現金払い」の受け入れを義務化することも検討されています。財務相は、消費者負担の提言、災害リスクに対応するため、そして「現金を使う権利」を保障するためだと説明しています。「現金払い」の受け入れ義務化は、キャッシュレス決済の割合が高いノルウェー(約97%)、フランス(約50%)などで既に義務化され、イギリス(約85%)では、銀行がATMを撤去することが制限されています。
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