米誌フォーリン・ポリシーが中国による台湾侵攻に備えるべきと主張 中国が台湾に威圧行動を続けるのはなぜか【河田成治氏寄稿】(前編)

2024.07.07

《本記事のポイント》

  • 中国の軍事演習の意味
  • 中国による台湾侵攻に備えるべき理由
  • 台湾の平和統一はもはや不可能

元航空自衛官

河田 成治

プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

5月20日、台湾の頼清徳新総統の就任式が行われましたが、頼氏はその就任演説で、台湾は主権独立国家であることを明言するなど、統一を狙う中国に対して毅然たる態度を示しました。

これに対し中国は大きく反発。5月23、24日の2日間に渡って中国人民解放軍の台湾方面を管轄する東部戦区が、陸海空軍やロケット軍などによる合同演習「聯合利剣-2024A」を実施しました。

演習は台湾北部、南部、東部、離島の金門や馬祖周辺など、台湾を取り囲むように行われましたが、中国軍東部戦区の李熹報道官は、「分裂を企てる台湾独立勢力に対する制裁で、外部勢力の介入や挑発に対する警告」だと説明しました(*1)。

中央社(*2)より
(*1) 人民網(2024.5.23)
(*2) 中央社(2024.5.23)

中国の軍事演習の意味

台湾を取り囲むかたちで行われた今回の軍事演習は、台湾侵攻の事前リハーサルともとれるような、極めて現実味を帯びた演習でした。

この演習について中国国防大学の張上級大佐は、台湾北部の演習は「台湾独立」を進める民進党の攻撃を狙ったものであり、南部は民進党の支持基盤や台湾最大の港湾である高雄港への打撃、東部はエネルギーの供給ルート、台湾独立勢力の域外逃亡、アメリカなどの外部勢力による支援ルートのそれぞれの遮断を狙ったものだと説明しています(*3)。

加えて、過去の演習とは異なった明確な特徴が指摘されています。1つ目は台湾封鎖が目的ではなかったことです。2022年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台直後に実施された大規模軍事演習では、中国は航行禁止・制限区域を設けて海空の封鎖作戦をアピールしましたが、今回はそういった禁止・制限区域の設定はありませんでした。

2つ目は、これまでの演習にはなかった離島への作戦が含まれ、かつ海警の巡視船が参加する演習であったことから、離島の封鎖や制圧も想定したものであると推定されます。

以上の特徴を総合的に考察するなら、中国が台湾に対して軍事行動を起こす場合、第1段階として海空封鎖による台湾の兵糧攻めから始まることが予測されると同時に、第2段階の攻撃局面においては、(1)金門島や馬祖列島などの離島の占領、(2)台北の政治中枢へのピンポイント攻撃と民進党・頼清徳政権の斬首作戦、(3)太平洋方面から進出する米軍や自衛隊の支援ルート遮断、(4)台湾の補給ルート及び補給拠点の制圧といった作戦が浮かび上がってきます。

さらには演習「聯合利剣-2024A」の末尾に「A」と付いているため、今後BやCに当たる演習が行われる可能性もあります。つまり今回の作戦は台湾攻略の一部を構成するに過ぎず、さらにより強化された台湾本島への上陸作戦、沖縄方面への作戦、対米作戦などを想定した演習が行われる可能性は高いと考えます。

このように、中国は今後も台湾攻略演習を様々な角度から実施し、着々と現実の侵攻準備を整えるのではないかと考えます。

(*3) 中川真紀「聯合利剣‐2024Aの概要」『国家基本問題研究所』(2024.5.31)

米誌フォーリン・ポリシーが中国による台湾侵攻に備えるべきと主張

今年2月、米誌フォーリン・ポリシーは、「中国はどれほど戦争に備えつつあるか」という論文を掲載しました(*4)。論文では、台湾侵攻がいつ起きるかを正確に予測することは不可能だとしつつも、暴発のリスクが高いか低いかを評価することはできるとして、中国による台湾侵攻の現実味を警告しました。以下にその要旨をご紹介します。

(*4) FP, "How Primed for War Is China? ," 2024.2.4

HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の世界情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。

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