「失われた30年」の本当の理由 ──まず競争を排除する「村社会的体質」からの脱皮を
2024.05.29
2024年7月号記事
「失われた30年」の本当の理由
まず競争を排除する「村社会的体質」からの脱皮を
なぜ日本経済は衰退し続けているのか。
その理由を探った。
タクシーを辛抱強く待つ人の行列。日本やイタリアなど、スマートフォンで車を呼び出せるUberやLyftといった配車サービスがない国ならではのおなじみの光景だ。だがアメリカでは、このような不合理な待ち時間はもうない。
アプリを立ち上げて運転手を呼ぶ。これは筆者がアメリカの空港に到着して最初に行う仕事である。翌朝の取材を控え、一刻も早くホテルに到着し準備をしたい。配車サービスを使えば、5分から10分以内に運転手が来てくれる。車種と運転手名が告知されるので、ほかの乗客と間違うことはないし、この10年で危険な目に遭ったことは一度もない。
その地域の雰囲気を知るのにもってこいなので、乗車時に運転手と世間話をすることにしている。前回訪米取材時のLyftの運転手は、昼間はプロのトランペット奏者で、Lyftは副業。「日本にも演奏旅行に行ったことがあるよ」と話がはずんだ。
規制が日本の経済成長の芽を摘んできた
到着後、運転手を評価し、チップの額を確定。相手も乗客を評価するので、自然と紳士的な振る舞いになる。
ところが日本では、タクシー業者の「権益」から、いまだに参入が規制されている。この状況をサプライサイド経済学の父のラッファー博士はこう分析する。「今、日本で起きているのは、政府を競争制限の道具として使うことでタクシー業界を守ろうとする動きです」(本誌48ページインタビュー)
不便な生活を強いられているのは消費者である。
人がタクシーを待つ時間の社会的費用は、消費税による税収の約1~2%(約2兆~4兆円)に相当するという試算もある。経済学者の蔵研也氏が述べているように(本誌46ページインタビュー)、こうした技術に基づいて次なる産業が生まれる可能性も考慮すれば、規制は経済の成長の芽を摘む張本人。
タクシーの行列は、「経済改革」ができない国の象徴的現象なのだ。
何が日米の格差を拡大させたのかを考えるべき
現在のアメリカのGDPは、27兆ドル(約4200兆円)。日本は1995年にアメリカのGDPの70%にまで追いついたが、ここまで経済格差が拡大するとは、誰が予測しただろうか(下図)。現在も米GDPの70%を維持していたら、日本のGDPは19兆ドルほどなければならないが、それは現在の約5倍に近い。
一人当たり労働生産性は、経済協力開発機構加盟38カ国中31位と底辺を彷徨う。
「失われた30年」が日本の閉そく感をつくっている。何が日本を衰退させたのか。次ページ以降で検討してみたい。
※文中や注の特に断りのない『 』は、いずれも大川隆法著、幸福の科学出版刊。
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