「ポトフ 美食家と料理人」 - ザ・リバティ Pick Up Movie
2023.11.29
© Carole-Bethuel (C) 2023 CURIOSA FILMS - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
© Stephanie Branchu (C) 2023 CURIOSA FILMS - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
2024年1月号記事
Pick Up Movie
編集部がオススメする「今こそ観たい」映像作品。
「ポトフ 美食家と料理人」
2023年12月15日(金)公開
心に光と輝きをもたらす食の芸術
- 【スタッフ】
- 監督:トラン・アン・ユン 脚本・脚色:トラン・アン・ユン
- 【キャスト】
- 出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル
- 【その他】
- 料理監修 :ピエール・ガニェール
原題:La Passion de Dodin Bouffant - 【配給等】
- 配給:ギャガ
- 【公開日】
- 2023年12月15日(金) Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
© Carole-Bethuel (C) 2023 CURIOSA FILMS - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
© Stephanie Branchu (C) 2023 CURIOSA FILMS - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
【レビュー】
19世紀末のフランス。「食」を芸術にまで高めた美食家のドダンは、静謐な森の中に佇む美しいシャトーで暮らしていた。二十年を共に働いてきた料理人ウージェニーは、彼が創造するレシピを完璧に仕上げ、時には彼の想像を超える一皿を作り出す。二人が生み出す数々の料理に人々は感動し、その熱狂は欧州各国に広がっていた。
二人は深い信頼と尊敬で結ばれ、互いを高め合いながら、愛する心もあった。だが、プロフェッショナルとしての自立を尊ぶ彼女は、ドダンの求婚を断り続けた。
ある日、美食仲間と共に皇太子の晩餐会に招待されたドダン。だが、彼の理想には程遠く、"豊かな晩餐だが、光や輝きがなく、論理も方針もない、息が詰まる"ものだった。
彼は「食」の真髄を示すため、最もシンプルな家庭料理「ポトフ」で皇太子を招待すると決意。その挑戦の矢先、ウージェニーが倒れ、新たな人生の局面が動き出すが……。
実在の人物をモデルにした、非常に美しい映像作品である。1台のカメラで本物の調理過程を流れるようなワンショットで撮し、厨房内の連携を見事に捉え、メインの照明である太陽光とキャンドルが、当時の豊かでナチュラルな生活をあたたかく照らし出している。
BGMが一切なく、鳥のさえずりや虫の鳴き声が終始かすかに聞こえる中、調理中の音が効果音となり、いつの間にか感覚を澄まして味覚や触覚、香りさえも想像させてくれる。
唯一、『タイスの瞑想曲』がフィナーレで流れる。"ラストのセリフ"に曲の意味を重ねてみると、芸術に捧げた二人の心の内への想像が、さらに膨らんでいくかもしれない。
ザ・リバティWeb シネマレビュー
「ポトフ 美食家と料理人」
(星4つ。満点は5つ)
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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