3期続投の加トルドー首相が、関係者に無断で中国国有企業に自伝を出版させていた 「中国に利用された」ことに国内で波紋と批判
2021.09.22
画像:meandering images / Shutterstock.com
《ニュース》
20日に行われたカナダ総選挙で、3期目の続投が決まったカナダのジャスティン・トルドー首相に、新たな"親中疑惑"が降りかかっています。
大手カナダ紙グローブ・アンド・メールによると、2014年にカナダで発刊されたトルドー氏の自叙伝『Common Ground(共生きの世界)』(未邦訳)を出版した出版社が中国の国有出版社と契約し、同書の中国語版を中国国内で発刊していたことが、このほど明らかになりました(14日付)。
《詳細》
同紙によると、トルドー政権が発足した翌年の16年、中国国有企業の江蘇鳳凰出版伝媒(コウソ・フェニックス・パブリッシング・アンド・メディア)が所有する中国南京訳林出版社がタイトルを『伝奇再続(伝説は続く)』に変更し、中国語版を出版したとのことです。
また同紙が、トルドー政権で国家安全保障問題担当補佐官を務め、カナダの諜報機関・安全情報局(CSIS)の元局長でもあるリチャード・ファデン氏に取材したところ、同書が出版されていたことは知らされていなかったことが判明。ファデン氏は、知っていれば強く反対したとした上で、「特に懸念されるのが、これらがすべて中国共産党委員会宣伝部によって出資されていることです」とコメントしています。
国有企業である江蘇鳳凰出版伝媒は、中国江蘇省共産党委員会宣伝部の指示に従って動く機関であり、中国政府による思惑が働かないわけがないということです。
同紙によると、トルドー氏の自伝が中国で発刊された当時、「トルドー氏には父親由来の優れたカリスマ性とリーダーシップがある」「ハリウッド・スターのようなハンサムな顔立ち」とトルドー氏を持ち上げる広告が打たれていたとのこと。
トルドー氏の父親である故ピエール・トルドー氏は、中国が文化大革命の最中にあり、ニクソン訪中の動きがまだ起きていない1970年の段階で、アメリカの反対を押し切ってまで中国と国交を結んだ親中派。その"遺伝子"に期待するかのような宣伝文句です。
2012年から16年までカナダの駐中国大使を務めたガイ・セイント・ジャックス氏も、中国の出版社が出版権を買ったことを知らなかったと同紙の取材に答え、次のように指摘しています。
「彼(トルドー氏)の自叙伝を発刊することで、彼ら(中国共産党)はトルドー氏を喜ばせたかったことは明らかです。彼らはプロパガンダの達人ですから」
ジャックス氏は、もし出版について相談されていたら、出版計画は中国政府による外国要人を抱き込むための戦略だと答えていたとも述べています。
政権関係者や駐中国大使にすら出版計画を知らないまま、中国国有企業と契約してしまった不用心さに批判の声が上がっています。
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